会社が倒産したときの賃金確保
会社が倒産したときの賃金確保
- 退職時までの未払賃金、賞与
なお、既に退職している場合には、遅延損害金の利率が退職日の翌日から年14.6%となります(賃金の支払いの確保等に関する法律6条1項、同施行令1条)。
- 解雇予告手当
30日未満の予告期間で解雇された場合に、平均賃金の30日分に達するまで請求することができます(労基法20条)。
- 退職金
退職金規定が定められているなど、退職金を請求することができる場合に請求することができます。遅延損害金は6%です。
また、法的な手段としても以下のような方法が考えられます。
- 仮差押え
未払賃金等を被保全債権として、会社財産に対して仮差押えを行い、財産の散逸を防ぐ方法です。仮差押えには保証金を積む必要がありますが、労働債権を被保全債権とする場合には比較的低額で認められることが多くなっていますし、資力のない場合には法テラスを利用することで負担を抑えることも考えられます。
ただし、仮差押えはあくまでも会社財産の現状を維持するための手続であり、これをしたからといって優先的に支払いを受けることができるわけではないことに注意してください。実際に給与債権を回収しようとすると、判決などの債務名義を取得して強制執行を行わなければなりません。
- 債務名義の取得とそれに基づく強制執行
賃金仮払仮処分決定や仮執行宣言付判決等に基づいて、会社の財産に対して強制執行を行う方法です。
- 先取特権に基づく強制執行
2003年6月の民法改正によって、使用者と労働者との雇用関係に基づいて生じた債権を有する者は、使用者の総財産の上に先取特権を有することとされました(民法306条2号、308条)。その先取特権の実行として、使用者の財産に対する差押えを行う方法が認められることとなりました。この方法によれば債務名義を取得することなく直ちに強制執行が可能となりますし、保証金を積む必要もありませんので、迅速に給与債権を確保することが可能となります。
この場合には「担保権の存在を証する文書」を裁判所に提出しなければなりませんので、可能であれば会社作成の未払労働債権額証明書を、それが無理な場合でも給与明細書や賃金規定、労働契約書などを揃えておきましょう。
最終手段として、給与が未払となっている労働者から会社の破産を申し立てる方法もあります。給与が未払になっている場合には労働者も会社に対する債権者となりますから、債権者申立による破産手続ができる場合があるのです。経営が苦しいにもかかわらず営業を継続しようとしており、このままでは財政状態が益々悪化してしまうというような場合に、最低限の財産を保全するために執られる方法です。ただし、予納金の負担などがありますので、よく検討することが必要になります。
また、優先的破産債権である労働債権について、配当手続を待っていては労働者の生活の維持が困難である場合には、配当手続以前に弁済を受けることも可能です。
ただし、中小企業退職金共済制度のように、退職金の積立先である外部の機関(退職金共済機構など)に労働者が直接支払いを求めると、その請求に基づき退職金が労働者に直接支払われる仕組みになっているものもありますので、確認してみて下さい。
具体的な流れは以下のようになります。
- 立替払を受けられる条件
- 勤め先が1年以上事業活動を行っていたこと
- 勤め先が倒産したこと(下記のいずれかに当てはまる場合)
- 法律上の倒産(破産、特別清算、会社整理、民事再生又は会社更生の手続に入った場合)
この場合、管財人等に倒産の事実等を証明してもらう必要があります。 - 事実上の倒産(中小企業について、労働基準監督署長が倒産していると認定した場合)
この場合、労働基準監督署に認定の申請を行う必要があります。
- 法律上の倒産(破産、特別清算、会社整理、民事再生又は会社更生の手続に入った場合)
- 労働者がその勤め先を既に退職していること。
- 立替払の対象となる未払賃金
定期的な賃金及び退職金に限られます。 - 立替払される額
未払賃金の額の8割で、退職時の年齢に応じて88~296万円の範囲で上限があります。 - 手続の流れ
- 倒産についての管財人等の証明又は労働基準監督署長の認定
- 未払賃金額についての管財人等の証明又は労働基準監督署長の確認
- 独立行政法人労働者健康福祉機構への立替払の請求