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年俸制の残業代請求

年俸制の残業代請求

ここ最近、能力や成果に応じて給料を決定する試みとして、「年俸制」を導入する会社が増えています。そこでは、優秀な人材が正当な評価を受けることで、労働者の意欲向上につながるといったメリットが強調されています。しかし、現実には、残業代などの人件費を削減する目的で違法に年俸制を導入する会社も多く見られるため、注意が必要です。

Q.私の会社は年俸制ですが、残業代はもらえないのでしょうか?
A.いいえ、それは間違いです。

労働基準法第37条は、原則1日8時間・週40時間を超える労働に対して、25%の割増賃金の支払いを義務づけています。残業代を支払わなくてもよいとされるのは、管理監督者に対してのみです。年俸制であっても、残業代の考え方は基本的には同じです。

もっとも、年俸制を導入するにあたって、あらかじめ残業代を年俸に含めておくことが一切認められないわけではありません。ただし、それにはいくつかの条件があります。

Q.年俸にあらかじめ残業代を含めることは許されるのですか?
A.次の条件を満たす場合のみ許されています。
  1. 年俸に残業代が含まれていることが労働契約の内容から明らかであること
    年俸に残業代が含まれているということを会社側が明確にしている必要があります。明確な規定や説明がないときは、残業代の含まれない年俸制と考えられますので、通常どおり残業に対する割増賃金を請求できます。
  2. 残業代部分と所定労働時間に対応する基本給部分とを区別できること
    年俸額のうち残業代の部分が区別されその額が明確になっている必要があります。この区別が不明確な支払方法は違法とされていますので、実際の残業代部分を会社に請求することが可能です。
  3. 実際の残業時間に対応する割増賃金額を下回っていないこと
    実際に残業した時間に対応する割増賃金額が、年俸に含まれている一定額の残業代を上回った場合には、その差額の支払いを会社に請求できます。
Q.年俸に含まれている残業代分以上に残業をさせられています。差額を請求したいのですが、どのように計算すればよいですか?
A.1時間当たりの基礎賃金を算定すること、実際の残業時間を確定することが必要です。

残業代の計算式は、1時間当たりの基礎賃金×残業時間×1.25です。1時間当たりの基礎賃金は、一定額の残業代部分を除いた年俸の総額を1年間の総労働時間で割って算定します。

次に、実際の残業時間を確認します。タイムカードや出勤簿だけでなく、手帳に残したメモやメールの送信日時も残業の証拠になります。

残業代を請求するには、会社と交渉をしたり、裁判を起こすといった方法があります。迷ったときは当事務所にご相談下さい。