管理費や修繕積立金を支払ってくれない区分所有者
借地・借家・マンション問題
Q.管理費や修繕積立金を支払ってくれない区分所有者がいます。どうすればいいですか?
A.マンションの管理費、修繕積立金などは、マンション住民にとっての「税金」であり、特別の保護が定められています。
(1) 特定承継人に対して責任を追及する方法
区分所有法7条1項による「管理費等」は先取特権*1の保護が与えられ、特定承継人にも責任が承継されます(8条)。特定承継人とは、売買や贈与、競売などにより、所有者となった人(買主など)のことをいいます。
対象には、駐車場、倉庫などの専用使用料も含まれます。また、水道、電気などの使用料についても、規約や集会の決議があれば特定承継人に請求できます。*2なお、消滅時効は5年です(最高裁2004年4月23日判決)。
(2) 競売を申し立てる方法
「共同の利益に反する行為」(6条)にあたるとして競売を申し立てること(59条)が考えられますが、「他の方法によっては管理費等が回収できないことが明らか」という競売を申し立てるための要件のハードルは低くありません。
そのように言えるためには、「先取特権の実行等の手続きを行っても抵当権等が設定されていて剰余価値がない」ことが必要です。*3
(3) 注意すべき点
管理規約において、あらかじめ遅延損害金(年15%~18%程度)について定めておくことが望ましいといえます。
弁護士費用を合わせて請求するためには、原則として管理規約に定めのあることが必要なので、弁護士費用の定めのない場合は不法行為に該当する場合のみ請求できます。*4
従って、弁護士費用についてもあらかじめ定めておくのが望ましいでしょう。
これらを踏まえ、滞納期間に応じて対応することが必要です。まずは内容証明郵便で請求書を送付して支払いを求めます。それでも滞納が続くようであれば、裁判手続を検討した方がよいでしょう。
- *1他の債権に優先して請求することができる権利。
- *2立替金請求権 管理組合が一括して支払い、各区分所有者へ請求する方式が一般的です。
- *3東京高裁2006年11月1日判決、広島地裁2006年6月15日判決が認容例。東京地裁2008年6月20日判決は棄却例。
- *4東京地判1992年3月16日判時1453号142ページ。
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