審査請求をせず、いきなり取消訴訟を提起できますか
行政訴訟・住民訴訟
Q.審査請求をしないで、いきなり取消訴訟を提起できますか。
A.行政事件訴訟法は、行政庁の処分について、審査請求ができる場合でも、いきなり取消訴訟を提起できることを原則としています(同法8条)。これを自由選択主義と言います。
例外として、個別の法律で審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消の訴えを提起することができないと定められているときには、審査請求を経ないでいきなり取消訴訟を提起することはできません(同法8条1項但し書)。これを審査請求前置主義(不服申立前置主義)と言います。
個別の法律で審査請求前置主義を採っているものは、次の通りです(主なものを例示)。従前は96の法律で審査請求前置主義を採っていましたが、平成28年4月1日の行政不服審査制度の見直しに合わせ、68の法律で廃止・縮小されています。
- ア 国税通則法115条(国税に関する法律に基づく処分)
- イ 地方税法19条の12(都道府県又は市町村の徴収金に関する更正処分等)
- ウ 地方自治法229条6項(地方公共団体の分担金等の徴収に関する処分)
- エ 労働者災害補償保険法40条(労災保険給付に関する決定)
- オ 健康保険法192条(被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分)
- カ 厚生年金保険法91条の3(被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分)
- キ 生活保護法69条(生活保護の決定及び実施に関する処分)
- ク 国家公務員法92条の2(職員に対する降給等の不利益処分又は懲戒処分)
- ケ 地方公務員法51条の2(職員に対する懲戒その他の不利益処分)
たとえば所得税の確定申告をして更正処分を受けた場合、「ア」に該当しますので、再調査の請求を経て、あるいは経ずに審査請求を行い、審査請求が棄却された場合に初めて取消訴訟を提起することができます。
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