犯罪被害者が被害の回復や弁償を求めるには
刑事事件等
通常の民事訴訟
被害者やその遺族は、犯罪によって被った損害(財産的損害や精神的損害)について、加害者に対して損害賠償を請求する民事訴訟を起こすことができます(民法709条)。被害者が死亡した場合、その被った損害は相続されるという法的構成になっているため、基本的には被害者の相続人に損害賠償請求の権利があります。
刑事和解
被告人と被害者やその遺族との間で、犯罪によって生じた損害などに関する民事上の請求について、裁判外で和解(示談)が成立した場合には、刑事事件を審理している裁判所に申し立てると、裁判所にその合意の内容を公判調書に記載してもらうことができます。この公判調書には、民事裁判で裁判上の和解が成立したのと同じ効力が与えられます(犯罪被害者保護法4、5条)。こうすることで、被告人が和解(示談)した際の約束を守らずにお金を払わない場合には、被害者は別の民事裁判を起こさなくても、この公判調書を利用して強制執行の手続をとることができます。
損害賠償命令制度
犯罪被害者が刑事手続に付随して、その成果を利用して簡易迅速に損害賠償を請求できる制度が新設されました。
対象事件は、(1)故意の犯罪により人を死傷させた罪(殺人・傷害・傷害致死・強盗致傷・強盗殺人・危険運転致死傷など)、(2)強制わいせつ、強姦等の性犯罪、(3)逮捕監禁罪、(4)略取誘拐罪などに限定されています。
申立の期間は、当該刑事事件の係属後、弁論の終結までの間です。申立手数料は一律2,000円です。また、法テラスの民事法律扶助(代理援助)を利用することが可能です。
損害賠償命令の裁判は、刑事裁判の判決に引き続き直ちに開かれ、原則として4回以内の審理で損害賠償の命令が出されることになっています。
犯罪被害者給付金制度
故意の犯罪行為による被害者やその遺族などに対して、国から給付金が出る制度です。給付金には遺族給付金、重傷病給付金、障害給付金の3種類があります。遺族給付金については、その支給を受ける遺族の範囲および順序について、法律は次のように定めています(犯罪被害者給付金支給法5条)。
- (1) 被害者の配偶者
- (2) 被害者の収入によって生計を維持していた者で、
1.被害者の子 2.父母 3.孫 4.祖父母 5.兄弟姉妹 - (3) 被害者の収入によって生計を維持していない者で、
1.被害者の子 2.父母 3.孫 4.祖父母 5.兄弟姉妹
Q&A一覧
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