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大学構内でセクシャル・ハラスメントが発覚

大学構内でセクシャル・ハラスメントが発覚した…

今月の相談教授が学生からセクハラで訴えられる事件が発生しました。今後このような事件を防止するためには、どのように対処すればよいのでしょうか?

セクシャル・ハラスメントとは?

労働省がまとめたセクシャル・ハラスメント(セクハラ)の定義を大学の場合に当てはめると、次のとおりの内容といえるでしょう。

「相手方の意に反した、性的な性質の言動を行い、それに対する対応によって学業を遂行するうえで一定の不利益を与えたり、またはそれを繰り返すことによって就業環境を著しく悪化させること」

大学におけるセクハラは、地位上の上下関係にある教職員や同僚間でもありますが、加害者が教職員で、被害者が学生や院生というケースが典型的です。この場合、教職員は学生を指導したり、学生の成績を評価するという立場にあるため、被害者である学生は拒否することにより成績上の不利益を受けることを恐れて、以前は泣き寝入りを強いられてきたことが多かったようです。

最近になって、セクハラの問題が社会的にもしばしば取りあげられるようになり、訴訟に至るケースも増加してきました。裁判に至るケースでは、加害者が被害者の名誉・プライバシー、性的自由・性的自己決定権などの人格権・人格的利益(憲法13条)を侵害したとして、不法行為責任(民法709条)を損害賠償請求というかたちで追求することが一般的です。

どのような行為がセクハラになるの?

セクハラの問題として以前から取りあげられていたのは、性的関係を強要するとか、触るとか、性的な行動を伴うものが多かったようです。これに対して最近では、(1)言葉によるセクハラ、(2)視線動作によるセクハラ、(3)行動によるセクハラなど、三つに整理することができるでしょう。

(1) 言葉によるセクハラ

「ひわいな冗談」や「性的なからかい」が典型的ですが、「固定的な性別役割意識に基づく言葉」や「肉体的な外観、性行動、性的好みに関する不適切な言葉」もセクハラとされます。このような言葉は発言した側の人間にとってみれば、何気(悪気)ない言葉だったとしても、被害者からすれば重大なショックを受けることがあります。もっとも、会話の流れや人間関係の度合い、価値観の相違、被害者の神経・感情などにより、この場面ではセクハラとは考えられないケースもあるでしょうし、被害者が言葉の内容を誤解してショックを受けたケースもあるでしょう。

(2) 視線、動作によるセクハラ

「胸や足をじっと見つめる」だけでなく、「顔をじっと見つめる」、「目配せをする」、などが考えられます。従来は、この種のセクハラは軽く考えられていたようですが、被害者にとってはやはり大きな苦痛であり、精神的なストレスになります。もちろん、被害者の誤解によるケースもあります。

(3) 行動によるセクハラ

(1) と(2)で述べた従来からの例のほかに、「しつこくデートに誘う」、「酒の席で酌をさせる」、「カラオケを強要する」、「しつこく電話をする」、「しつこくメールをする」など、さまざまなケースがあります。

表1に参考になると思われる判例をまとめました。

表1 大学構内で起きたセクハラ事件の判例
大学事件の内容裁判所判決日および判決
鳴門教育大学指導教授Bは、大学院生Aに数十通もの手紙を送ったり、暗に愛人関係を要求したりした結果、Aは博士課程への進学を断念した。徳島地裁平成10年9月29日判決
慰謝料200万円、弁護士費用20万円。BのAへの名誉段損などを理由にする損害賠償請求は棄却。
三重大学大学教員Bが、学生Aを二次会のカラオケBOXの中で押し倒した。名古屋高裁平成12年1月26日判決
慰謝料90万円。押し倒して馬乗りになった行為について不法行為を認定。
東北大学指導教員 Bは、大学院生Aに性的接触を繰り返し、 Aが入院していると知るや、その治療という理由で研究室でキスをしたり、抱きつくなどの行為を重ね、2回にわたってホテルで肉体関係をもった。仙台高裁平成12年7月7日判決
慰謝料750万円。弁護士費用150万円。

セクハラ問題の解決の解決策

1999年3月に文部省(現在の文部科学省)でセクシャル・ハラスメント防止規程(コラム参照)が制定され、最近では多くの大学でセクハラ防止規程、苦情処理窓口の設置、リーフレットやニュースレターの配布による広報が進んでいます。予防することはもちろん重要ですが、セクハラを訴える相談に対して、訴訟に至る前の早い段階で被害者が窓口に相談できて、被害の拡大防止に対応できる体制づくりが最も望ましいことはいうまでもありません。

それでは、セクハラ問題が起きない(起こさない)ために、学生、院生を指導する立場の教職員としては、どのような心構えで接したらよいのでしょうか?

とくに難しいことは何もありません。(1)相手の人格を尊重すること、(2)相手を性的な関心の対象としてのみ見る意識をなくすこと、(3)異性を劣った性として見る意識をなくすこと、(4)相手が不快に思うことを、繰り返さないこと、(5)不快であっても、相手は言動で明確な意思表示ができない立場であることを理解する思いやり、といったところでしょうか。

裁判で訴えられたら…

事実関係の整理をしたうえで、弁護士に相談してください。被害者が弁護士に依頼した場合、弁護士はいきなり裁判を提訴するのではなく、通常はまず内容証明郵便で請求します。したがって、弁護士に依頼しない場合でも、事実関係を整理したうえで、文書で回答しておく必要があります。

コラム

セクシャル・ハラスメント防止規程

セクハラの防止および排除のための措置ならびにセクハラに起因する問題が生じた場合に、適切に対応するための措置に関して必要な事項を定めることにより、人事行政の公正の確保、職員の利益の確保および職員の職務能率の発揮を図ることを目的としています(1条)が、運用通知により、各機関が積極的にセクハラ防止策に取り組むことを求めています。

この規程は、セクハラの定義(2条)、職員の責務(3条)、監督者の責務(4条)、国立学校等の長の責務(5条)、苦情相談への対応(6条)、相談員等の責務(7条)、人事院への苦情相談(8条)、不利益扱いの禁止(9条)の9条からなります。