まきえや

[事件報告] 請求額130万円の残業代請求で裁判所が150万円の解決案を提示した例

1 過酷な職場を退職→残業代請求へ

Aさんはとあるコーヒー屋で正社員として働いていました。長時間労働はもちろんですが、新人の指導や事務作業などさまざまなことを担当せざるを得なくなり、あまりの忙しさに体調を崩して辞めざるを得なくなりました。

その後、「会社にきちんとものを申したい」ということで残業代請求をすることになったのです。

2 不誠実な会社の主張と対応

法律的な論点は「○○手当」がいわゆる固定残業代として有効かどうかです。しかし、賃金規定では、「○○手当」が何時間分の残業時間に対応するのかは記載がありませんでした。また、どんなに長い残業をしても別途割増賃金が支払われておらず、会社には、きちんと残業時間に対応した残業代を払うという姿勢は見られませんでした。さらに、裁判の中で会社側は、「○○手当」は75時間分の残業代相当額であると突然主張してきました。しかしそのような説明は一度も聞いたことがなく、そもそも過労死ラインに迫ろうかという残業を前提とした制度が有効と言えるはずがありません。

また、会社側は、裁判の中で、Aさんの仕事が遅い、仕事ができない、お客さんからクレームが入っていた、アルバイト店員と恋愛関係になったなどと残業代請求と関係がなく事実でもない事柄を主張してAさんを非難してきました。

3 請求額を上回る裁判所の提示額

Aさんの訴えと会社側の対応を見て、「さすがにこれはひどい」と裁判所が思った・・・かどうかは分かりませんが、請求額130万円(遅延損害金を入れても140万円)に対して、裁判所から示された和解案はそれを上回る150万円。会社も受け入れ、無事に解決へと至りました。

請求額を上回る和解案が示されることはとても珍しいことです。私としても、事実と権利をきちんと主張することの大切さを再認識しました。

「まきえや」2024年秋号