相続登記が義務化されました
今年の4月1日から相続登記が義務化されました。相続したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが必要です。
今年の4月1日より前に相続があった不動産についても、相続登記がされていない場合には、2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。
そして、登記をしないことについて正当な理由がない場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続人申告登記をすれば義務を免れます
相続登記をするには相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。何らかの理由で協議が難しい場合はどうすればよいでしょうか。
その場合には、相続人申告登記という手続があります。これは、必要な戸籍などを添えて自分が登記上の所有者の相続人であることを法務局に申告すれば、その相続人は相続登記の義務を履行したものとみなされます。
しかし、相続人申告登記では、不動産の売却などの処分が出来ませんので、結局は遺産分割を行う必要があります。
相続人が多数の場合はどうすればよいでしょうか。
遺産分割協議を放置したままにすれば、第1段階の相続人が亡くなると、その人の相続人が第2段階の相続人となり、次から次に相続人が増えていきます。
解決するための最初の作業は、戸籍関係書類を収集して相続関係図を作り、相続人の現住所を特定することです。
相続人が確定すると、それぞれの相続人の法定相続分を計算します。相続人多数の場合は僅かな相続分になっていますので、手紙に解決したい事情と相続分を譲ってほしいことを書いて、相続関係図、遺産目録を同封して送ります。ある事件では、「一族の全容が初めて判りました。これは家宝にします」という感謝の言葉もいただきました。協力してくれる人には、署名して実印を押した相続分譲渡証書と印鑑登録証明書を送ってもらいます。他の全員から譲渡してもらいスムーズに解決した事件もあります。
それでも難しい場合は、家裁への申立と伝家の宝刀「調停に代わる審判」
これまで担当した中で最も多かった相続人数は60数人でした。最初に担当した司法書士は投げ出しましたが、私はこれが解決できなければ法律の意味がないと考え受任しました。半数強の相続人からは相続分を譲渡してもらいましたが、約30人の相続人が残りました。ある相続人は「ちっぽけな遺産なんか欲しくないが、無視して嫌がらせしてやる」と言っているという情報も入りました。
そこで家裁に遺産分割の申立をしました。家裁は各相続人に意向調査をして相続分を主張する意思のない相続人は除外していきました。そして、残り10人ほどになった時、伝家の宝刀の「調停に代わる審判」を出すことになりました。これは「申立人は遺産の不動産を取得する。申立人は、各相続人に対し法定相続分に対応する金銭(家裁が計算します)を支払え」という内容で、これを争うには審判を受け取った日の翌日から2週間以内に異議申立をする必要があります。そして、誰からも異議のないまま全当事者の期間が経過すると審判が確定します。
行方不明や海外にいる場合は
審判対象者の中には行方不明の3人がいました。60数人の中で3人が行方不明という割合の高さに驚きました。この3人については不在者財産管理人制度を利用しました。これは、家裁が選んだ第三者の弁護士が、行方不明の人の財産管理人になるもので、財産管理人として審判を受け取ります。法定相続分に相当する金銭が支払われるので、異議を申し立てることはありません。そして、家裁は、この金銭の中から財産管理人の報酬を決めました。
他に、日本の会社から海外に赴いて働いている独身の人で、日本に帰国する予定もない人がいました。この人については、会社の日本の事業所と相談した結果、その事業所が責任を持って審判を受け取ることを本人の同意のもとに約束してくれました。
このようにして、全員に審判が届き、誰からも異議なく審判が確定した結果、相続登記が完了しました。