1 今年の集いは「教育」を考える
2023年6月16日(金)、ハートピア京都3階大ホールにて、「第19回憲法を生かす講演の集い」を開催しました。今回の集いは、今話題の映画「教育と愛国」を上映し、この映画を企画・制作した斉加尚代監督に講演して頂きました。
斉加監督は1987年毎日放送に入社、報道記者などを経て2015年からドキュメンタリー担当ディレクターとなり、様々な企画・番組を担当され、第55回ギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞した「教育と愛国?教科書で今何が起きているのか?」も手がけられました。この番組に追加取材を加えた映画版を今回の集いにて上映させていただきました。
2 映画「教育と愛国」上映
映画「教育と愛国」では、「正しい挨拶の仕方」「道徳授業の風景」からはじまり「教育についてのアメリカから日本に対する評価」「道徳授業の再開」「道徳の教科書からパン屋の記述が削除」「社会の教科書から従軍慰安婦や沖縄戦の記述削除」等、教育と教科書の歴史について、関係者のインタビューを交え語られるものでした。その中では、教育の内容について、政府や自治体のトップが圧力をかける、その背後には政府のいいなりになる人間を作るという構想が見え、この映画が背筋も凍るホラー映画と評されたことに納得がいくものでした。
インタビューの中では、第2次世界大戦における日本軍の行為について学ぶことは、自虐史観であると評する人物が出てきます。平和な日本にいると、戦争や紛争はどこか遠い別の場所で行われ、自分たちとは関係がないと考えるようになりかねません。だからこそ、戦争の恐ろしさを学び、知ることで二度と繰り返さないと誓うことができるのだと感じます。憲法26条は、戦後の教育について、何のため、誰のために行うのか、その反省から始まっています。戦争の歴史を学び、知り、教えることは、自虐的な史観を生み出すのではなく、そこから反省し、過ちを繰り返さないことにつながるはずです。
3 斉加監督の講演会
上映後は、斉加監督の講演が行われました。斉加監督は教育の独立性を社会に問いたいと考えて、この映画を制作したといいます。私は、この映画を見て、教育の独立性を害する政治介入が行われていると強く感じられました。そして、このことは日本だけではないそうです。この映画はアルゼンチンの国際映画祭の公式上映作品となり、海外でも反響をよびました。教育の自由を奪うこと、歴史を改ざんすることは世界のあらゆるところで行われているとのことです。
では、どのように教育に対する政治の介入を防いでいくべきでしょうか。
斉加監督は、政治の介入は教育の中身については許されず、教育の中身は学術・教育の専門家が考えるべき事であるとの前提のもと、教育の中身に介入し教師や学者をつるし上げる政治家を批判しました、そして、教育への政治の介入に対する特効薬はない、だからこそ、子どもたちに向いて頑張っている教師を保護者や地域が支えていくことが大切であると述べます。
政治的要素を語るなと言われるがあまり、若い教師は、選挙に行ってはいけないのではないかと考えることもあるそうです。また、インターネット等の発達により誰もが情報を発信し、受け取ることができるようになったこともあり、教師が、意見が激しく対立する問題や歴史的事象に触れるだけで大きなバッシングが行われ、人格否定まで起こります。今、教育の現場は自由に歴史や学問を教えることが、厳しい状況にあると感じました。
私は、本日の上映会講演会を聞き、子どもたちはもちろんのこと、地域の教師や保護者の方々を支援し、教育の破壊に歯止めをかける活動を続けていきたいと思いました。