第15回「憲法を活かす講演の集い」開催
2018年6月14日(木)18時30分から、ハートピア京都3階大ホールにて、第15回憲法を活かす講演の集いを開催しました。約160名の方にご参加いただきました。
講師には、中野晃一上智大学教授(政治学)をお招きし、「政治を私たちの手に取り戻すためにできること」というテーマで講演をしていただきました。
現在は、立憲主義回復のための運動、野党共闘を進める運動の中心的存在として活躍されている中野先生ですが、元々は政治学者として政治を観察する立場にいなければならないという考え方から、政治活動との距離を置いていたそうです。しかし、第二次安倍政権の誕生と野党勢力の衰退の中で、民主主義の危機を感じて立ち上がらざるを得なくなったという中野先生の思いはとても印象的でした。以下、中野先生お話の要点をいくつかご紹介します。
- 米国ではトランプ政権が生まれ、ヨーロッパでも極右が第2党、第3党になっている。リベラルな人たちを攻撃して、求心力を高めるという手法が世界でも広がっている。
- 安倍政権もリベラルを叩き、愛国的なイデオロギーを振りまく。とにかくリベラルを叩くイデオロギーが先にあり、憲法を改正し、その後何をやるかは米国にお任せする、そんな政権である。
- 根本的には選挙制度の問題が大きい。自民党に投票した人は(有権者の)4人に1人もいない。小選挙区制というゆがんだ選挙制度のもとで、自民党が3分の2以上の議席を獲得できている。世界でもっとも現職と世襲に有利な制度である。
- 小選挙区制の中では、望まざるとも野党共闘をせざるを得ない。そんなとき、リスペクト(尊敬)の精神が大事である。それぞれの政党、市民たちが違う考えを持っていて、それを尊重して力を合わせていかなければならない。
- 若い人の政治参加はなかなか難しい。学生も生活が大変で、バイトや授業と本当に忙しい。若者たちでつくるシールズは解散したが、それぞれいろんな分野で頑張っている。彼らがなぜ立ち上がったのかと言うと、みんな上の世代の人たちの平和教育や民主教育をうけて育った子たち。親や先生から平和問題を学び、広島や長崎、沖縄に行き、勇気があって立ち上がる感性があった。こうした子どもたちが育っていたということはとても重要なこと。
- 「対立争点」と「政策争点」をどちらも打ち出すことが必要。福祉や雇用など「生活争点」だけでは争点になりにくく、有権者からも程度の問題だと捉えられてしまい勝ち切れない。同時に、「立憲主義守れ」「憲法改正反対」と掲げて「対立争点」をはっきりさせる必要がある。「生活争点」と「対立争点」の2段仕掛けでたたかうことが大事。
- 来年の参院選も厳しいたたかい。2013年の参院選では31の1人区のうち、29は自民党が獲った。ここからスタートしなければならない。
以上、簡単にまとめましたが、当事務所が市民の皆さんと共同しながら憲法を守り活かす活動をしていくために大切なことを教えていただき、また大きな励ましも頂いたように思います。
これから秋に向けて憲法情勢もますます緊迫化していきます。一日も早い安倍政権の退陣、改憲をさせない取り組みを強めていきたいと考えています。
中野晃一先生のプロフィール
上智大学国際教養学部国際教養学科教授。専門は比較政治学、日本政治、政治思想。著書に『私物化される国家 支配と服従の日本政治』(2018年、角川新書)『右傾化する日本政治』(2015年、岩波新書)などがある。安倍政権に対峙する「立憲デモクラシーの会」の呼びかけ人として、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の結成に関わる。
「まきえや」2018年秋号