一部不当労働行為を認めた ~生協パート労組事件が和解で円満解決~
理事会による組合攻撃
京都生協パート労組が、京都府労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てたのは2014年4月のことでした。当時、京都生協のパート職員は、形式的には1年間の有期雇用とされながら、現実には契約更新を繰り返して無期雇用と同様に働いていました。こうした実態から、京都生協では、個々のパート職員の契約更新に先だち、理事会とパート労組との間で契約更新に関する覚書を締結した上で、毎年3月、一斉にパート職員の契約更新を行うという労使慣行がありました。覚書は、理事会による一方的な不利益変更を許さないための事実上の労働協約であったのです。
ところが、2014年度の契約更新にあたり、理事会は、今後は労働条件を不利益変更することもありえるとして、従前の覚書の意義を後退させるような案を提案してきました。パート労組が覚書締結を拒んだところ、理事会は、覚書を締結しないまま個々のパート職員との契約更新を進めようとしたため、さらにパート労組は更新契約書も提出しないという方針で臨みました。これに対し、理事会は、「執行部への申し入れ」の体裁をとった書面の中で、執行部個人の言動について事実を歪曲して誹謗中傷する文章を複数回にわたって記載し、これら書面を業務文書のように職場に掲示・回覧し、執行部への対立を煽ろうとしました。そこで、パート労組は府労委へ救済申立を行ったのです。
府労委での不当認定
理事会は、覚書後に契約更新を行うという労使慣行は認めつつも、従前覚書が締結されなかったことはないのだから、覚書が締結されない限り契約更新手続きをしてはいけないという労使慣行まではないという理屈を持ち出してきました。理事会が労使慣行を軽視していることは明白でした。また、使用者にも表現の自由はあると主張し、執行部への個人攻撃を正当化しました。ところが、府労委は、2015年9月、理事会に不当労働行為の意思までは認められないなどして、不当にもパート労組の救済申立を全て棄却しました。
中労委での逆転一部勝利
パート労組は引き続き更新契約書を提出しないという方針を貫いて闘いながら、中央労働委員会へ再審査の申立を行いました。評価や解釈の問題にもちこまれると勝てないとの反省から、中労委では、約2時間半にわたる会議の録音テープと録音反訳を新たな証拠として提出し、あらためて尋問を行うなどして、理事会が書面に記載した「事実」が虚偽であることの立証に力をいれました。その結果、2017年3月、中労委は、理事会が記載した文書の一部につき府労委の判断を取り消し、不当労働行為と認定したのです。
この時点で、府労委への申立から既に3年が経過し、労働契約法による無期労働契約への転換ルールを背景に、多くのパート職員が現状に合致した無期雇用契約となっており、覚書をめぐる事情が大きく変化していました。中労委の判断は一部救済ではありましたが、パート労組はこれ以上の紛争の長期化は無益と判断し、中労委の命令を受け入れることとし、理事会へもそれを求めました。しかしながら、理事会は、中労委の命令の取り消しを求める裁判を東京地方裁判所に起こしたのです。
東京地裁での和解解決
府労委でも中労委でも、公益委員とパート労組は和解での円満な解決を試みましたが、理事会は頑としてこれに応じようとしませんでした。東京地裁でも、敗訴は明白であるにもかかわらず、理事会は中労委の判断を無にするかのような和解内容にこだわり続けました。しかしながら、裁判所の粘り強い説得により、2018年8月、中労委の判断を尊重すること、また、今後の労使交渉において同様の事態を生じさせないように誠実に交渉する旨の和解が成立したのです。
実に4年以上にわたる闘いを支えたのは、団結して闘ったパート労組執行部や組合員の奮闘はもちろん、上部団体や他の生協労組からの支援でした。府労委、中労委とも、毎回、多数の方に傍聴いただけたことは、私たち弁護団にとっても大きな励みでした。
(弁護団:大島、尾﨑)