まきえや

京都府北部の課題について

事件報告 京都府北部の課題について

1 米軍経ヶ岬通信所

経ヶ岬は、京都府最北端の丹後半島の突端に位置する岬で、リアス式の断崖、群青の大海原、白銀の砂浜など風光明媚な景勝地である。この経ヶ岬が位置する京丹後市は、松葉ガニの水揚げで全国的に有名である。日本海の陸棚斜面にかけての水深200〜400mは、松葉ガニの格好の漁場で、エサとなるプランクトンも豊富なため身の詰まったおいしいカニとなる。特に間人漁港で水揚げされた松葉ガニは、「間人ガニ」として、品質・味ともに最高級品である。

この自然豊かな町に、2014年、航空自衛隊経ヶ岬分屯基地に隣接する形で、米軍経ヶ岬通信所が設置された。そして、同年末より、マイクロ波を使用したミサイル防衛用早期警戒レーダーである「Xバンドレーダー」が稼働を開始した。米軍経ヶ岬通信所は、近畿地方唯一の在日米軍基地であり、軍人・軍属等約160人が勤務している。

(1) Xバンドレーダー

Xバンドレーダーは、青森県の米軍車力通信所に国内で初めて配備され、経ヶ岬への配備はそれに継ぐものとなる。防衛省は、日本のミサイル防衛に同レーダーが役立つと説明しているが、ヘーゲル前国防長官は、同レーダーの配備計画につき、「長距離弾道ミサイルから米国本土を防衛するためのもの」と明言している。現代の戦争においては、レーダーの情報なしには兵器はその性能を十分に発揮できないところ、有事の際には、レーダー施設が真っ先に攻撃対象となる。経ヶ岬に同レーダーを設置するということは、丹後半島を東アジアでの戦争の最前線へと変貌させるものであり、地元住民は戦争の脅威に日々晒されることになる。

米軍経ヶ岬通信所が設置されて以降、通信所の運営や住民の安全・安心について議論する場として、「米軍経ヶ岬通信所の設置に係る安全・安心対策連絡会」(通称、「安安連」)が定期的に開催されている(2017年8月末時点で、合計13回開催されている)。この安安連には、地域住民代表等が出席できるのみで、残念ながら一般市民は出席できない。また、安安連の運営については、防衛省の報告ばかりで肝心の安全・安心対策が抜け落ちている旨の声も上がっている。安安連を開催したことを、地域住民への説明責任を果たした口実として防衛省や米軍が利用しないかが危惧される。

(2) 京丹後市民と米軍関係者による交通事故等に関する支援事業

京丹後市においては、米軍経ヶ岬通信所が設置されて以降、米軍人・軍属の交通事故等が後を絶たない(2016年度末時点で、40件超の人身・物損事故が生じている)。交通事故等の加害者が米軍人・軍属の場合、被害者が賠償金を得るまでの手続は非常に煩雑であり、かつ、支払われるまでに要する期間は相当の長期間に及ぶため、被害者は泣き寝入りさせられることもあった。

そこで、京丹後市は、米軍人・軍属と京丹後市民との間で交通事故等が起きた場合に、弁護士費用を助成する市独自の救済制度を創設した。当該制度によれば、1案件で2回まで弁護士との相談の場が無料で設けられ、市民が実際に弁護士に委任した場合には弁護士費用として最大300万円が助成される。ただし、当該制度は、交通事故等が発生した後に役立つ制度であり、交通事故等を未然に防ぐことを目的とした制度ではない。そのため、市民の安全・安心が依然として脅かされていることに違いはない。

2 福知山射撃場における米軍の射撃訓練

福知山市では、2016年11月29日に、米軍経ヶ岬通信所の軍人・軍属による陸上自衛隊福知山射撃場での初めての実弾射撃訓練が実施され、福知山市が、実質的に、経ヶ岬に継いで第二の米軍基地となった。その後、二回目の訓練が2017年3月6日に、三回目の訓練が同年5月24日に行われた。市民は、米軍人・軍属が実弾射撃訓練を行うことに強い不安感を抱いている。また、訓練のための移動等の際に、福知山市内で米軍人・軍属と福知山市民との間で交通事故等が発生するおそれもある。

京都府が米軍基地に蝕まれていくのを阻止するためにも、京都府民が一丸となり、米軍人・軍属の実弾射撃訓練に反対の声を上げ、米軍基地を京都府から撤退させなければならない。

「まきえや」2017年秋号