事件報告 沖縄現地調査
1 はじめに
2017年7月下旬、弊所の奥村弁護士、尾﨑弁護士らとともに、沖縄現地調査を敢行した。今回の3泊4日の現地調査の全行程は、沖縄へ訪れるのが初めての私がハンドルを握った。南は本島最南端の喜屋武岬、北は本島最北端の辺戸岬まで、その過程で様々なスポットにも立ち寄ったため、総移動距離は300㎞ほどになるのではないだろうか。4日間沖縄本島を駆け巡ったが、運転による疲労は全くなかった。フロントガラス越しに、エメラルドグリーンの海、初めて見るおもしろい形の木々、艶やかな花、独特な家並みが目に飛び込んできて、私を常に楽しませた。
今回赴いたスポットは、轟ガマ、魂魄の塔、平和祈念公園、ひめゆりの塔、平和の塔(喜屋武岬)、大浦湾、キャンプ・シュワブ(辺野古)、N1ゲート(高江)、ヤンバルクイナ生態展示学習施設、闘争の碑(国頭村)、祖国復帰闘争碑(辺戸岬)、古宇利大橋、今帰仁城跡、ひんぷんガジュマル(名護)、嘉手納基地、普天間飛行場、嘉数高台公園、不屈館等である。いずれのスポットも、沖縄の過去と今を私の五官に訴えかけ、沖縄の未来、ひいては日本の未来について考えさせるものであり、どれもが全て私に強烈に突き刺さった。
2 辺野古・大浦湾からの抗議活動
辺野古・大浦湾は、絶滅危惧種262種を含む5,800種以上の生物が共存する生物多様性に富む海である。日本政府は、普天間飛行場を閉鎖し、この大浦湾にその代替施設を建設しようとしている。本年4月には、沖縄防衛局が、新基地建設に向けてキャンプ・シュワブの沿岸部を埋め立てる護岸工事に着工した。私たちは、新基地建設反対の声を上げるべく、抗議船に乗り込んだ。出航後間もなく、オレンジ色のライフジャケットを着用した海上保安官が、ゴムボート艇に乗船して私たちの監視を開始した。厳しい訓練を受けて選抜された海難救助のプロフェッショナルである彼らは、今や海上汚染工事を援護するガードマンである。海には灰色の砕石が大量に投じられており、事態は深刻であった。この新基地には、係船機能付の全長約272mの護岸が建設予定であり、250m以上の大型船が接岸可能となる。私は2017年8月に米海軍佐世保基地の視察をしたが、佐世保基地に新たに配備される強襲揚陸艦が接岸できるようにするためにこの護岸が建設されるとのことであった。佐世保基地には現在強襲揚陸艦ボノム・リシャールが配備されているところ、2017年秋頃には、ボノム・リシャールに替わって、F-35Bステルス戦闘機(2017年1月より米海兵隊岩国基地に配備された)の離発着が可能な同型の強襲揚陸艦ワスプが配備予定である。辺野古新基地は、佐世保・岩国と一体となった米国の攻撃的出撃拠点になろうとしているのである。
3 嘉手納基地の視察
嘉手納基地では、空中給油機と思しき機体によるタッチアンドゴー(飛行機が着陸して一瞬車輪を滑走路に接触させ、直ちに離陸する訓練)が幾度も行われていた。憲法9条を掲げる日本に住まう住民の頭上を、米海兵隊の航空機が爆音を轟かせながら縦横無尽に飛び回る。その異様な光景はあまりにもショッキングなものであった。
4
「米国第一」を掲げて誕生した米トランプ政権は、世界最大の核軍事力の大増強を宣言し、同盟国である日本の軍事費増額や役割の拡大を求めており、今後ますます在日米軍基地がアジアでの出撃・補給基地として急速に機能強化されることが危惧される。米軍専用施設面積の割合は沖縄県が約70%と他県に比べて突出して多いが、在日米軍基地の問題は沖縄県だけでなく全国に波及しており、京都府においても米軍経ヶ岬通信所が設置された。「戦争放棄」を謳う憲法9条を世界に誇る日本の地が、米国の攻撃的出撃基地となるのは許されない。
今回初めて沖縄に訪れたが、沖縄の風土や自然に魅了されるだけでなく、日米地位協定・米軍基地問題について改めて考えさせられる機会となった。