まきえや

時効だいじょうぶ? ~時効期間を知ろう

時効だいじょうぶ? ~時効期間を知ろう~

皆さんは、「時効」という言葉自体はご存知だと思います。しかし、忙しさにかまけて、気がついた時には、既に時効で請求できなくなっていた、ないしは、請求したところ、時効と言われてしまったということにならないようにして欲しいと思います。

実は、私がこのテーマで記事を書こうと思ったきっかけは、最近、相談に来られる方で、既に時効になっている請求権の相談が相次いだからです。

もちろん、後述するように、単に時効期間が形式的に過ぎていても、時効中断されている場合もありますので、諦めないでいただきたいと思います。

但し、時効中断は例外の救済の道だと思って、早めに時効にかからないように権利行使をしておくことが重要です。

時効の期間は?いつから期間が開始するの?(起算点の問題)

  1. サラ金などの貸金請求権について
    • サラ金業者が個人業者の場合は、時効は、債権の一般的な時効期間であり10年です。
      但し、サラ金業者が法人の場合は、商事時効で5年です。
    • 貸金の時効期間の起算点は、貸金返還請求権の発生時期となります。通常は、返済時期を決めている場合は、弁済期ということになります。返済時期を決めていない場合は、考え方の争いはありますが、判例は、契約時としています。
  2. 請負代金について
    • 請負代金請求権の時効期間は、3年です。
    • 時効の期間の起算点は、代金支払い時期の特別な約束がなければ、引渡しを伴うものは引渡時点、それ以外は仕事の終了(完成)時点です。
       たとえば、建築業者が、平成20年11月30日に完成した建物を半額の代金を受領し、引き渡してしまった場合、残代金の時効は、原則として平成23年11月30日の経過と共に成立します。
  3. 売買代金請求権
    • 製造業者・卸売業者や小売業者が物を売却した場合の売掛代金請求権の時効は、2年です。
    • この場合の時効の起算点は、代金の支払時期の合意があれば、支払時期からということになります。
  4. 交通事故や犯罪の加害者に対する損害賠償請求権
    • 交通事故の加害者に対する損害賠償請求権は、不法行為による損害賠償請求権です。この場合の時効期間は、不法行為による損害賠償請求権として、3年です。
    • 時効の起算点は、被害者が、損害及び加害者を知った時から3年です。通常は、事故のあった日ということになるでしょう。
    • 因みに、交通事故といえば、自賠責保険請求が考えられますが、自賠責保険の被害者請求する場合は、事故が平成22年4月1日以降に発生したものである場合、時効期間は3年(平成22年4月1日施行の保険法の改正がありました)、平成22年3月31日以前に発生した事故の場合は、2年です。
  5. 賃金請求権・退職金請求権
    • 賃金請求権は、2年、退職金請求権は5年です。
    • 起算点は、賃金請求権は、給与の支払日です。退職金請求権も支給日が起算点です。
  6. 離婚の財産分与、慰謝料請求権

     離婚に伴う財産分与や慰謝料については、通常、離婚成立と合わせて解決することも多いですが、離婚成立の際に請求することがなかったとしても、離婚後にあらためて請求することができます。

    • その時効については、財産分与請求権は2年間、慰謝料請求権は3年間です。
    • 時効の起算点は、財産分与請求権について離婚成立時となります。

        慰謝料請求権については、離婚そのものに対する慰謝料と捉えて、時効の起算点を離婚成立時とする考え方が主流ですが、暴力や不貞行為など離婚原因となる行為を個別に捉えて当該行為が終わった時点とする考え方もありますので、離婚成立後に慰謝料請求する際には注意が必要です。

 このほか、時効期間がもっと短いもの(1年)もありますので、要注意です。

注意して欲しい時効中断について

 時効中断事由があると、その事由から更に時効期間が再度算定されます。この場合、内容証明で請求しておけばよいと思っている方がおられます。しかし、単に内容証明など文書で請求しているだけで、6ヶ月間の間に裁判手続きなど所定の手続きをとらずに、放置していると時効中断の効力が生じませんので要注意です。

 時効にかかりそうだと思った場合は、早めに弁護士に相談されることをお薦めします。

「まきえや」2012年春号
この記事の内容は2020年3月末までに発生した債権であることを前提としています。民法改正により、2020年4月1日以降に発生した債権については時効期間が異なっていますので、ご注意下さい。
改正後は、原則として一律に「権利を行使することができることを知った時から五年」(改正民法166条1項1号)となり、不法行為の場合は3年(同724条。ただし「人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権」については5年(同724条の2))となっています。
また、賃金請求権については、2020年3月の労働基準法改正により、同年4月以降に発生するものについては3年ということになっています。