携帯電話解約料9,975 円は「ぼったくり」!
全国初、携帯電話解約料の違法を認める
京都地方裁判所第4 民事部は、2012 年7 月19 日、KDDI(au)に対して、携帯電話の2 年間の定期契約が中途解約された場合に、利用者に解約料9975 円を支払わせる契約条項の使用の差止を命じる判決を下しました。
原告の適格消費者団体京都消費者契約ネットワーク(KCCN)は、他の携帯電話会社大手のNTTドコモやソフトバンクに対しても同様の訴訟を提起していますが(詳しくは、まきえや2011年夏号、「携帯電話解約料のぼったくりをやめさせよう」を参照ください)、今回の判決は、全国で初めて、携帯電話の解約料を定めた契約条項の違法(消費者契約法違反)を認めたものです。
携帯電話会社は、利用者を囲い込み、大もうけしています
ただ判決は、携帯電話契約が中途解約されることなく、期間の最後まで継続していれば、KDDI が得られたであろう通信料収入等(逸失利益といいます)が、中途解約によって失われるとして、「損害」が発生することを認めてしまいました。そして判決は、23ヶ月目・24ヶ月目に解約した場合の損害の平均額は、それぞれ8000 円、4000 円であり、解約料9975 円と比べて高すぎるという理由で契約条項の一部を無効と判断し、23ヶ月目・24ヶ月目に解約した一部の原告に対してのみ、解約料の一部の返還を認めたのです。
しかしながら、そもそも携帯電話会社には、中途解約によって「損害」など発生しません。2年間という契約期間は、携帯電話会社の一方的な都合で設定されたもので、解約料を支払わせることで、携帯電話会社は、利用者に中途解約を断念させて「囲い込み」、大もうけしているのです。
2011 年3 月期のKDDI の営業収益は、約3 兆4345 億4600 万円、2012 年3 月期で約3 兆5720 億9800 万円にものぼり、営業利益はそれぞれ約4719 億1200万円と約4776億4800万円で、このうち、携帯電話などの電気通信事業の営業収益は、それぞれ約2 兆4894万0300円、約2 兆3941 億3600 万円を占めています。
利用者を、半永久的に拘束しても違法ではない!?
判決の内容で最も不合理なのは、2 年間の契約期間が更新された後の期間については、新規に契約が締結されたと同じように捉えて、KDDI に「損害」が発生するとしている点です。
しかしながら判決の理屈では、24 か月目にはKDDI の損害はゼロになるのですから、25か月目以降も契約が続けば、KDDI には先に示したように莫大な利益が生じ続けるはずです。一方で利用者には、どれだけ長く携帯電話を使用していたとしても、2 年目、4 年目、6 年目・・・というように、2 年に一度しか、解約料を支払わずに携帯電話を解約するチャンスが巡ってこないとしたら、これほど不公平で不合理なことはありません。
そもそも私たちは、新しい携帯電話を契約するときに、将来解約することを考えて契約しているでしょうか?仮に2 年間の期間設定がされていることを認識していたとしても、それが自動更新され、半永久的に拘束されることについては認識さえもしていないのではないでしょうか。
今後に注目を!
今回の判決は、「囲い込み」を行うビジネスモデルに一石を投じる極めて画期的な判決ではありますが、不満な点も多く、原告と弁護団は、これに控訴し、闘いの舞台は大阪高裁に移りました。現在大阪高裁では、本年3 月、NTT ドコモの解約料を有効と判断した京都地裁第2 民事部の不当判決に対する控訴の裁判も審理されています。また11 月20 日には、ソフトバンクに対する京都地裁判決が出される予定になっています。
今後も、大手携帯電話会社が、利用者から解約料をぼったくる一方で自らは莫大な利益をあげ続けるという構造を問いただす一連の訴訟に注目していただき、ご支援、ご協力を賜りますようお願い致します。
(当事務所の弁護団員は、糸瀬美保と谷文彰です)