逆転勝訴!公金を返還せよ!!~宮津丹後リゾート事件~
闇の中から浮上した事件
この事件は、元宮津市長が、正体不明の者の言うことをきき、タダ同然の土地を異常な高額で宮津市に購入させるという公金私物化事件というべき事件です。しかも、正体不明の者は、京都府の丹後リゾート公園構想が公表される2年も前から、付近の土地を大量に買い漁っており、これは京都府の秘密情報を入手しうる者だけが行いうる「闇」から出てきた事件です。「闇」そのものはまだ解明されていませんが、天網恢々疎にして漏らさずとはよく言ったもので、事件が「闇」から顔をのぞかせた瞬間、住民が見逃さず、2009年2月13日、差し戻し大阪高裁での大勝利に導いたというものです。
疑惑の予算計上
2001年9月、宮津市議会に「公益的機能保全森林整備事業費」なる予算4,200万円余りが提案されました。議会で、市側がいくつかの土地の住所を明らかにしました。それを聞いた当時議員だったF氏が、「どこかで聞いたことのある土地だな」と気づき、記憶をたどりました。そのカンに間違いなく、10年前の1991年、将来宮津市に購入させようと作りあげた「不動産事業協同組合」なる組織が購入した土地で、国土利用計画法違反のため元の所有者K氏に返還されたはずの土地でした。
土地開発公社の不可解な購入経過と監査委員の妨害
原告となる馬谷さんは、上記の話を聞き、土地所有権の移転経過を調べたところ、元の所有者K氏に一旦もどった後、1996年12月に今度は丹後地区土地開発公社に移転していたのです。その土地が今度は宮津市に移転されようとして4,200万円余りが計上されたことがわかりました。
そこで何か裏があると睨んだ馬谷さんは、2001年12月18日、市に監査請求を申し立てました。するとその2日後、宮津市監査委員は監査請求の対象にならないと猛スピードで却下しました。無論、監査の対象にならない訳がありません。そこで、訴訟を提起することにしました。奥村が馬谷さんに会ったのは年末ぎりぎりでした。
裁判所での展開
裁判の経過で明らかになった点で最大の争点となったのは、なぜ宮津市が土地開発公社に問題の土地を購入させたかでした。宮津市長は、1996年にこっそり、問題の土地取得を土地開発公社に委託していたのです。その理由は、地権者への丹後リゾート用地購入に伴う代替土地の提供でした。
原告は、購入目的は偽装である、全く役に立たない、購入価格も通常の5倍を超えている、K氏からだけ購入するのは不自然等々、考えられるあらゆる疑問をぶつけました。
しかし、京都地方裁判所は、過去の判例に依拠し、公社に購入させる契約をしている以上購入は義務であるので、「価格が高かろうが」購入しなければならないとして棄却しました。控訴審も同様の判決をしました。
最高裁で逆転
このように1審、2審と敗訴しましたが、最高裁は原告の主張を認め、大阪高等裁判所に差戻しました。最高裁は、公社を介して自治体が土地を購入する際に、そもそもの購入の委託契約が私法上無効な契約の場合は無論、私法上無効でない場合も、もし購入すれば予算の適正な執行上問題を生じ、これが看過できない結果を生む場合、購入義務はないとしました。
その実質的理由は、上記のとおり、そもそも購入目的がない、仮に購入目的があったとしてもそれに沿った手続きがない、値段が異常に高い、崖地や斜面地もあり到底使いものにならない、というものです。
大阪高裁に差し戻され、今回はじめて、元宮津市長に、宮津市が支出した公金4,200万円余りを返還せよとの判決が出されました。
判決の意義は、自治体の首長は、特定の人物の不当な脅しに屈してはならないこと、また、問題のある土地の購入は、委託の際のチェックはもちろん、さらにもう一度、公金支出をする際によく検討せよということです。
公社からの買取り業務を否定した画期的な判決です。7年にしてようやく実のある判決が出されました。