退職強要は許さない たった一人の組合員、地位保全勝ち取る
知らない間に正社員からアルバイトに、そして解雇
Cさんは、2000年、I物産にアルバイトで雇用され、清水寺の参道にある飲食店で働いて来ました。その4年後、正社員に採用され、すぐ店長になりました。Cさんは、仕事が好きで、清水寺を参拝に来たお客様に喜んでもらおうと一生懸命働き、春秋の桜と紅葉のライトアップの時期にはシフトの変更などで午前0時を過ぎるぐらまで働きました。
一生懸命働いてきたCさんですが、健康上の都合で、2007年に1ヶ月休職し、今年の1月末ころにも療養を兼ねて休職しました。そうしたところ、会社から電話があり、代表者から「復帰するなら他の社員が辞めると言っている」と言われ、その結果、飲食店ではなく本社での勤務を承諾しました。
ところが、2月に出社したところ、いきなりグループ内の別会社であるA社に連れて行かれ、給与をもらってみると正社員ではなく時間給1000円でのアルバイトに変わっていました。さらに、別会社のS社に行くよう言われ、言われるとおり行ったところ、今度は、療養しなさいと言って退職届に判を押すよういわれました。もちろんCさんは拒否しました。するとその翌日S社の解雇通知が届きました。納得できないCさんが出社すると入り口で阻止されました。
書いてもない「退職届」が提出された!
Cさんは友人に勧められて労働組合に相談し、たったひとりの労働組合を結成しました。すぐに団交を申し入れました。同時にI物産に対し、地位保全・賃金仮払いの裁判申立もしました。すると会社側からなんとCさんが1月に書いたというI物産への「退職届」が提出され、びっくり仰天。確かに印鑑はCさんのものです。そうなるとどういう方法でCさんの印鑑が使われたかが問題です。Cさんは、1月に本社勤務を命ぜられた後、飲食店に出向いて私物を引き揚げに行ったとき、印鑑がなかったことを思い出しました。そして、後日会社からいろいろな荷物が送られてきた中に印鑑があったのです。
仮処分では、Cさんが退職届を自分で書いたのか、印鑑の保管は誰がしていたのかが争点でした。Cさんは、審尋で印鑑の所在の変遷について詳しく話しました。
本年9月30日、裁判所は決定を出し「本件判子は申立人以外の相手方関係者が管理していたものと考えられる」「本件退職届に押捺された本件判子の印影が申立人の意思に基づくとまでいうことはできない」と判断して、地位保全を認め、会社に賃金仮払いを命じました。
これからが本番
会社がCさんの「退職届」を作ってまでも退職させようとした背景には組合結成に対する嫌悪があると思われます。しかし、組合の応援があったからこそ一人の闘いも可能だったのです。
これから本訴ですが、これまでの会社側の労働者に対する労働条件の勝手な切り下げや変更を許さず、権利を確立するよう最後までお手伝いするつもりです。