不当労働行為、教職員・生徒に対する不当な管理支配を許すな!
はじめに
この事件は、私立洛陽総合学院高等学校(洛陽高校)において起こった不当労働行為事件です。洛陽高校は、37年間も同校において教壇にたち、よりよき職場環境の確立を目指して労働組合活動に勤しんできた畠山智恵子教諭に対し不当な退職金カット処分を行ってきたのです。現在、多くの支援者の方々に支えられて京都地方労働委員会(地労委)に対して懲戒処分の取消命令、減額分の退職金の支払命令等の救済命令を、京都地方裁判所(地裁)に減額分の退職金の支払いを命じる判決を求めて闘っております。
事件の概要
今回の事件は2002年12月2日、洛陽高校が一方的に就業規則の変更を行い、退職金の全部または一部を支給しない対象者に、「迷惑退職により退職した者」を追加したことに端を発しました。迷惑退職とは、「定年又は自己退職を承認されたものの、退職直前に懲戒の理由又は解雇に該当する事由等の不都合な行為があって学院に迷惑をかけた場合」をいうのです。この変更は非常に軽微な懲戒処分を受けた場合にも退職金の全部または一部を支払わないことにできるという、教職員にとって著しく不利益でかつ著しく不合理な変更でした。
その上で洛陽高校は、翌年3月、畠山教諭に対して些細な事務処理上の「ミス」を口実に不当な懲戒戒告処分を行い、処分理由を何ら説明することなく「迷惑退職」に該当するとして313万円もの退職金カット処分を一方的に言い渡してきたのです。
事件の問題点、背景
上記の就業規則改訂当時、退職予定者は畠山教諭ただ一人であったこと、年度途中に改訂を行うという改訂時期の異常性、これらのことを考えれば、今回の一連の就業規則改訂、懲戒処分、退職金カット処分は、畠山教諭、及び組合に対する不当労働行為です。
この事件の背景
畠山教諭が就任した当時における洛陽高校の状況
畠山教諭が洛陽高校に就任した当時から、洛陽高校は自宅通勤以外の専任教員を学校の塀の中の寮に強制入居させ、午後9時の門限を厳守させ、外泊を禁止する、毎日のように教職員を校長室に呼び出す(教職員が泣きながら校長室から出てくるのが常態でした)、生徒会作りの運動をしていた生徒達を処分する等、管理主義的色彩が濃厚な学校でした。このような職場状況を改善し、教職員が働きがいをもてる学校にするために、そして、生徒達が生き生きと過ごせる学校に変えていくためにも組合が必要と考えて活動してきた畠山教諭に対して、洛陽高校は正担任につかせない、昇給させない、という差別的な取扱をしてきたのです。
1972年における京都地労委に対する不当労働行為救済申立
この不当な攻撃に対して1972年3月、京都地労委に対して組合は不当労働行為の救済申立をして闘いました。それから3年以上経過した1975年12月 26日、洛陽高校は京都地労委において、そのような取扱をやめ、過去に遡って正担任としての給与額、昇給額の支払いをすることを約束し、「学院は、組合に不当労働行為の疑いを抱かせるような行為のあったことを反省し、今後は憲法・教育基本法および労働組合法の諸規定を尊重し、学院における労働組合活動を保障する。」という和解協定書にサインしたのです。
和解成立後も・・・
しかしながら、この和解成立後も洛陽高校は畠山教諭に外部研修への参加を認めず、修学旅行の引率をさせず、学年主任・教科主任・3年生担任を一度もさせないという極めて卑劣な差別を行ってきたのです。
そして今回の事件
そういう経過の中で、今回の就業規則改訂、畠山教諭に対する懲戒処分・退職金カット処分が行われたのです。今回の退職金カットの理由とされた成績・出席日数に関する実務的処理の「ミス」については畠山教諭以外に15名の教諭が同じ「ミス」をしていたのですが、懲戒処分を受けたのは畠山教諭のみでした。
勝利に向けて
このように、洛陽高校は、労働組合を敵視し、本来ミスとは言わない軽微な事務処理上の「ミス」に対して厳しい処分で臨むという姿勢なのです。その後洛陽高校は、退職金カット処分の前提となった懲戒処分の理由を処分後である2003年8月18日になってから付け足して種々説明しましたが、クラス生徒の日次出欠の入力を間違ったことや、翌年度の教科書申し込み書類を退学予定者分まで提出したこと等がその内容であり、これまた教職員の資質に関わらない事務処理上の軽微な「ミス」を針小棒大に取り上げたものばかりでした。このように労働組合を敵視し、軽微な事務処理上の「ミス」を針小棒大に取り上げて厳しく処分するという学校では、生き生きとした教育が行われることはできません。洛陽高校が、生徒、教職員が日々生き生きと教え、教えられる学びの舎へと生まれ変わるように、この闘いを頑張っております。
現在、京都地労委、京都地裁において、畠山教諭、現職のA教諭(組合員)、学校側代表者、学校側証人の尋問(地労委では審問)が行われています。この尋問を通じて、2002年12月の就業規則改訂が教職員に対する不合理な不利益変更であり無効であること、学校退職金の4分の1である300万円強もの減額処分を行ったことが過酷なものであり無効であること、そして何よりも、これらの一連の洛陽高校の行為が不当労働行為にあたることを京都地労委、京都地裁に認めてもらわなくてはいけないと思っています。
毎回多くの方に傍聴に来て頂き応援を受けております。この事件は、洛陽高校の未来がかかった大事な事件なのだということを京都地労委、京都地裁にアピールするためにも、これからも多くの方の傍聴をお願いいたします。
最後に
最後に、先日、地労委審問の後に行われた「洛陽総合高等学校の教育と畠山先生を支援する会」により開催された「勝利を目指す集会」に参加したときのことをお話しします。この集会では教え子の方が、洛陽高校在学時に自ら体験された事実を生々しくを語られ、他校の先生が、教職員の事務処理上のミスがあった場合におけるその学校の対応についてお話しされていました。そのようなお話しを聞いて、この事件の核心をより深く理解できたという思いがしました。事件に関連する事実を体験された方々のお話には弁護士を突き動かすものがあると思います。関係者の生のお話を一つでも多く聞くことの重要性が思い起こされました。
当事務所の担当弁護士は村井と秋山です。皆様からも応援頂けますよう宜しくお願いいたします。