ヤミ金融被害激増!
激増するヤミ金融被害
貸金業登録の有無、契約形式の如何を問わず、出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締まりに関する法律)違反の高金利により金員を貸し付けることを業とする、いわゆる「ヤミ金」による被害が全国で激増しています。平成15年1月に出された警察庁の統計によれば、平成14年に検挙されたものだけでもその数238件(前年比13%増)、被害者数12万2,115人(前年比153%増)、被害総額は159億8,384万円に上ります。
京都弁護士会でも、今年1月、有志の弁護士30名が145のヤミ金融業者を京都府警察本部に一斉告発しました。
しかし、その後もヤミ金の被害は増える一方です。その被害の実態について、いくつかのケースを紹介します。
Aさんの場合
Aさんは、生活苦から消費者金融(サラ金)10社に総額200万円以上の負債を負い、債務整理の相談に来られましたが、サラ金の他に東京の業者、いわゆる「トイチ」業者からも借入れをしていました。
ここで「トイチ」業者とは、「ミナミの帝王」のような高利貸しの代名詞(10日で1割の金利を取る)ではなく、4万3,000円の手数料だけで東京都の貸金業登録を受け、ダイレクトメールや広告、電話等と振り込みを利用して全国各地の被害者に貸付を行う「都(1)」業者の事です。その金利は「トイチ」どころの騒ぎではありません。
Aさんの場合、携帯電話にかかってきた業者2社に5万円の借入れを申し込んだところ、2万7,000円がそれぞれ振り込まれ(2万3,000円は手数料ないし利息名目で天引き)、(1)業者には1週間後に2万7,000円、(2)業者には2万4,000円を返済させられていました。年利にして (1)5214%、(2)4634%です。これは出資法の金利規制(年利29.2%)の約150倍ないし170倍以上の金利です。おまけに(2)業者は、期限の前日に入金確認の電話をさせ、これが遅れるとさらに5,000円を上乗せして振り込ませるのです。
Bさんの場合
“可能融資額30万円”などと書かれたBさん宛のダイレクトメールを受け取ったBさんは、東京の業者(ほとんどが「トイチ」の登録業者)に融資を申し込み、6社からそれぞれ1万円から1万7千円の振り込みを受け、1週間毎に2万2,000円を返済していました。その金利は、年利6747%から 11471%になります。ある業者は、1日遅れる毎に3割、つまり年利10950%の金利を上乗せしていました。Bさんは、1ヵ月の間にこれらの業者から35万円余りを受け取りましたが、結局総額約67万円を返済させられていました。
Cさんの場合
ヤミ金からの借入れが9社に上ったCさんのような人もいます。サラ金への返済のために、ヤミ金1社に手を出したところ、次々に電話がかかってくるようになり、「他への返済をまとめたらどうか」と1度に5万円から6万円を振り込んできたのです。
ヤミ金業者は情報を共有しており、資金繰りに困っている人をねらい打ちします。破産宣告を受け、官報に公告された人などは格好の標的です。
脅迫による取り立て
では、どうして、Aさん達はこのように高い金利を払ってしまうのでしょうか。
ヤミ金は貸付を行う際に、自宅や本人の携帯電話の番号の他、勤務先の電話番号、家族や親族の氏名、住所、電話番号、勤務先などを聞き出しており、支払いが滞るとこれらに対して、夜となく昼となく一斉に電話をかけます(テレホンテロ)。その内容は、「今から行く、早く避難した方がいいぞ」「ぶっ殺してやる」などというものであり、弁護士が介入した後も法律事務所にまで電話をしてきて「どろぼうの味方をするのか」「弁護士に頼んだことを後悔させてやる」などと怒鳴り散らします。そのため、Cさんは、勤務先を退社せざるを得なくなってしまいました。
被害者が電話に出なくなると、「さぎし、どろぼう、かねかえせ、このままですむとおもうな」などという手紙や電報を何通も送りつけてきます。これらは明らかに脅迫であり、犯罪です。Cさんのもとにはドラえもんとドラミちゃんの電報が届きました。値段を調べてみたところ、電報料の他に2,000円かかるそうです。確かに何も知らずに受け取った人にとっては、爆弾でも入っているのではないかと不安になりますから、これだけの費用をかけても回収できると思っているのか、それとも脅迫行為であることをごまかすために可愛く装っているのか、その意図は不明です。
電文「大至急連絡されたし 連絡なき場合回収作業開始」
ヤミ金への対処
Bさんは事務所に相談に来られる前に警察に相談したところ、元金と利息制限法に引き直した利息の返済をアドバイスされたそうです。しかし、そんなお金を振り込んでみても、ヤミ金が黙るわけがありません。
彼らは、法律に違反していることを十分認識しています。事実電話口で「うちは法律の枠外でやってますから」と堂々と話すトイチ業者もありました。
法律上は、ヤミ金が行う高利の貸金契約は公序良俗違反により無効であり、支払いを受けた金銭については一切返還義務がありません。また、ヤミ金に支払ったお金は不当利得ですから、返還させなければなりません。借りたお金は返すべきなのではないか、と思うかもしれません。ヤミ金もそう言って返済を迫ります。しかし、そもそも貸金契約自体が無効なのですから、“借りた”金では無いのです。
破産免責後ヤミ金に手を出してしまったが、もう法的手だては無いとあきらめてしまっている人も多いようです。しかし、高利の返済のために何社ものヤミ金からの借入れを行う前に弁護士に相談してもらいたいと思います。
ただ、ヤミ金被害は社会現象となりつつあります。テレビのコマーシャルでは、サラ金業者が子犬を買うためや海外旅行に行くために借金をすることを勧めていますが、この超低金利の時代に年利29.2%での返済を行うこと自体困難であり、これがヤミ金に手を出さざるを得ない一つの原因となっています。貸金業の登録に当たっての営業保証金制度を導入し、出資法・貸金業規制法の罰則を強化するなどの「ヤミ金対策法」の緊急立法とともに、出資法の制限金利を引き下げ、また、サラ金やヤミ金に借金しなくても生活できる社会を作ることが求められています。