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[ダイイチNEWS 04] 離婚後、子どもの権利を守るために 民法(家族法)改正 離婚後共同親権について

民法(家族法)が変わります

2024年5月17日、離婚後も父母双方が子どもの親権を持つ「離婚後共同親権」の導入などを内容とする改正民法が成立しました。改正法は2年以内に施行されます。改正前の民法では、婚姻中は父母が共同で親権を持ちますが、離婚すると父母の一方が親権者となります。これが今回の改正により、離婚後も父母が共同で親権を持つことを認めることになりました。

本稿では、離婚後共同親権について簡単に説明します。

離婚後、共同親権となるのはどういう場合か?

離婚後も共同親権となるのは、
❶父母が合意をした場合、または
❷家庭裁判所の決定がある場合です。
②は父母の合意がない場合でも共同親権とされてしまうものですが、DVや虐待事案は除外され、また父母の関係性などに留意して判断がなされます。

すでに離婚した父母への影響はあるか?

すでに離婚した父母については直ちに法改正の影響はありません。

ただし、すでに離婚した父母であっても、あらためて、家庭裁判所に共同親権への変更を求める調停や審判を申し立てることができるようになります。その調停の中で父母が合意をし、または家庭裁判所の審判がなされれば、共同親権に変更されます。

共同親権はどう影響する?

親権は、子どもの監護及び教育に関する一切について決定する権限です。監護とは、日々の養育のことです。共同親権となった父母は、この親権を共同で行使しなければなりません。

現在でも婚姻中は共同親権の状態ですから、父母は親権を共同で行使しなければなりません。父母の関係が良好であれば、子どもの監護や教育をめぐって大きな対立が生じにくく、親権そのものを意識することなく生活している方がほとんどと思います。しかし、夫婦の関係が悪化して離婚した後にも、父母が親権を共同で行使しなければならないとなれば、子どもに関することを適切なタイミングで決められないことも出てきます。

そのため、改正後の民法でも、
❶監護及び教育に関する日常の行為
❷子の利益のため急迫の事情があるとき(話し合いに時間をかけていたのでは子どもに不利益があるときなど)
については、単独で親権の行使をすることができるとされました。

ただ、①日常の行為とは何か、②どういう場合に急迫の事情があるといえるかは、具体的な線引きが難しいケースもあります。

例えば、進学先の決定や手術のような医療行為については①日常の行為には当たらないといえますが、入学金の支払いや妊娠中絶手術など手術を急ぐ必要がある場合は②急迫の事情があるとされています。そう言われても非常に判断に悩むところだと思います。

今後、国においてガイドラインを策定する方針となっていますが、どの程度具体的なものができるのか注視が必要です。

親権を共同で行使すべき場合であるのに父母で合意ができなければ、申立により裁判所が決定をします。

共同親権を選択すべき場合は

ここからは私の意見となりますが、離婚に至る夫婦はその関係が深刻に悪化していますので、離婚後に子どものことについて円満に協議をして決めていくのは難しいのが一般的です。父母で合意ができない場合に一々裁判所に申し立てをしたり、弁護士に依頼をしたりするというのは時間的経済的にたいへんなことです。

共同親権ではありませんが、離婚の際に同居する親を監護権者、別居する親を親権者として、親権と監護を分離する方法はこれまでも可能でした。しかし、このような方法は離婚後に紛争になりやすく、子どもにも悪影響となる可能性が高いものとされ、裁判所においてはほとんど実施されてこなかったのが実情です。

したがって、離婚後共同親権が子どもの利益になるケースというのはあまり多くはないと考えられ、積極的に選択すべきものとは言えないでしょう。離婚後に父母が冷静な話し合いができるかどうか、慎重に検討する必要があります。