京都第一

知っておきたい暮らしの法律知識② ペットの医療過誤訴訟
〜獣医師の過失により家族(うさぎ)を 失ったことの慰謝料が認められた事件

[概要] 飼い主が訴えたペット喪失の悲しみ、司法の判断は。

動物は法律上「モノ」と見なされます。家族同然のペットを亡くした場合でも、人の場合に比べてきわめて低額な慰謝料しか認められないのが今の司法の限界です。ただ、今回のペットの医療過誤訴訟では、過去の裁判例に比較して、高額の慰謝料が認められました。

家族の一員を失う悲しみに

A夫婦には、家族同然に愛情を注ぎ育ててきたうさぎB(ドワーフホト種)がいました。飼い始めて3年ほど経ったある時、Bの食事や排泄状況が芳しくなかったことから、C動物病院のD獣医師に診てもらい、点滴等の内科的治療を続けていたところ、治療4日目に突然、D医師から「今日が限界」「このままでは腸管が破裂して死ぬかもしれない」等と強烈に手術を勧められました。突然の方針転換に困惑し、抵抗を示していたA夫婦ですが、D獣医師の執拗な勧めによって手術をしないと助からないと思わされ、最終的には手術に同意しました。

ところが、その約2時間後、病院から手術中のBが危篤という連絡があり、急いで病院に向かうも、A夫婦が到着した手術室にはすでにBは亡くなっていました。

病院の対応に納得のいかなかったA夫婦は事務所に相談に来られ、私と寺本弁護士が担当し、2021年12月、手術により死亡するリスクの説明がなかったことなどを理由に、D獣医師や病院の運営会社らに対して慰謝料を求める訴訟を提起しました。A夫婦は、なぜBが死ななければならなかったのかを知るため、また、今後日本で同様の悲劇が起こらないようにという願いを込めて、提訴を決意されました。

ペットの医療過誤に踏み込んだ判断

本年3月26日、京都地裁は判決で、手術が直ちに必要不可欠な状況ではなかったとした上で、D獣医師に説明義務を果たしていなかったことの過失を認定しました。そして、原告らにとってBは「かけがえのない家族の一員」であるとして、夫婦合わせて60万円の慰謝料を認めました。

うさぎの医療過誤による判決は過去にほとんどない中で、病院側の過失と、これまでの判例と比べて高額ともいえる慰謝料が認められたことには意義があり、A夫婦も判決を受け、これでひとつの区切りがつけられるとの思いを口にされました。本件では、判決後に記者会見も行い、司法の動物に対する見方について広く世間に問題提起することにもなりました。

家族の一員だったうさぎ