[概要] ご存じですか? 相続人のいない相続財産の行方
近時、単身者世帯が増加している中、病気の方や高齢者を相続関係にない方がケアする場合も多くなっています。そして、ケアされていた方が亡くなられ、相続人もなく、遺言も作成されていない場合に、ケアした方などに、相続財産が分与されることがあります。
「トクベツエンコシャ」、聞き慣れない言葉かも知れません
遺言もなく、相続人がいない時、相続財産清算人選任の申立により家庭裁判所で相続財産清算人が選任されて、遺産を整理(清算)しますが、負債などを清算した後の残余遺産は、最終は、国に帰属します。
この過程で、申立をして裁判所が「特別縁故者」と認定すれば、遺産の一部ないし全部を取得できる場合があります。それが「特別縁故者への分与申立」手続きです。
「特別縁故者」とは
① 被相続人と生計を同じくしていた者
② 被相続人の療養看護に努めた者
③ ①ないし②に準じて「特別の縁故があった」者
となっており、①~③に該当するか否かは、裁判所が判断します。
①は、いわゆる内縁の妻や夫、事実上の養親子が典型的です。②は、被相続人に対し、献身的に療養看護を尽くした者であれば、親族でなく、職場の元同僚、民生委員でも認められた事例があります。
裁判所には裏づける資料を出す必要があります。①では、同一の住所を示す住民票や近所の方の陳述書②③の関連では、入院、施設入所の緊急連絡先であったこと、入院治療等の同意書、身元保証の書類、治療・入院費支払の領収書、写真、日記なども資料となります。
特別縁故者と不動産の分与
私は、金銭の分与の事例の他に、「不動産の分与」も複数、認めさせてきました。
そのためには、申立人と対象不動産の関わりの資料も必要です。たとえば「対象不動産の管理・使用に深く関わってきたこと」を示す写真・陳述書・管理費用の領収書等です。
ところで、お世話してくれた方が特別縁故者の申立をするかはわかりません。仮に申立てたとして、分与が認められるかは、一重に裁判官の判断によります。従って、自分のお世話になった人に財産を残したいのであれば、遺言を書いておきましょう。