京都第一

所属弁護士 PICK UP① いろんな人生と深く関わる だから、弁護士はおもしろい

弁護士を目指したきっかけは?

私は1946年生まれで、子どものとき弁護士という仕事は知られていませんでした。当時鮮烈に覚えているのは『弁護士プレストン』。弁護士親子が法廷で真実を追求していく社会派弁護士のドラマで、「弁護士って、なんてかっこいい仕事なんだろう!」と心を奪われました。

ぼんやりと「いろんな人の人生に関わる仕事に就きたい」と考えていました。大学進学のときに、教師になるか弁護士か迷いました。子どもも好きでしたが、弁護士のほうが社会に揉まれてやりがいがありそうな予感がありました。そこで、京都大学の法学部に進学しました。

大学3回生のときにサークルをつくり、仲間たちと「どんな法律家になるべきか」を話し合い続けました。高度経済成長の1960年代で、大気汚染や自然破壊といった公害が問題視されていた時代です。働く人の権利を守る労働組合の話も聞きにいきました。「社会をよくする弁護士になりたい。弱い立場の人たちの権利を守りたい」と、理想像が明確になりました。

4回生のときに司法試験に合格、卒業して司法研修所へ。このとき「裁判官もいいかもしれない」と迷いました。でも、裁判官は判断を下せても、自由に裁判所や事件を選ぶことはできません。「自分で案件を選べる」弁護士の道に定めました。

忘れられない、あの裁判

弁護団の団長を務めたアスベスト訴訟
11年かけていよいよ最終ラウンドへ

18~19ページで谷弁護士が紹介する「京都建設アスベスト訴訟」は、2011年に始まって全国とも連動した裁判で、京都の弁護団長を務めました。2021年5月の最高裁判決で国・建材メーカーが厳しく断罪されて、勝訴。私の弁護士人生にとって大きな事案でした。しかし建材メーカーの抵抗が続いていて、完全な勝利はその先です。私の年齢を考えると、これが担当する最後の長期案件になるでしょう。

これからの目標は?

「勝たないと、弱い人の権利は守れない
勝てたときは最高にうれしい」

不当に蹂躙(じゅうりん)されている方々の権利を守ってともに生きていくことが、生きがいです。勝たないと弱い人の権利は守れないので、勝ちにはこだわります。弁護士をしていて最高にうれしい瞬間は、勝ったときです! 今年で77歳になり、人生100年時代になにができるのかは悩んだりもしますが、やっぱり私は仕事人間。事務所の後輩たちには、ひとつの事件にのめり込んで、前に出て徹底的に戦って勝ってほしいですね。

わたしの愛読書

沈まぬ太陽 全5巻

山崎 豊子[著]

国民航空のエリートだった主人公が、組合委員長となり会社とやり合い、流刑人事を受けて始まる物語です。やっぱり「弱い人たちの権利をどう守るか」という目線で小説を読んでしまいますね。

オフショット

「大雪山にて」

「ダイイチ」2023年新春号