1 Aさんからのご相談
「不正受給した企業年金を返しなさい。」非情な通知が京都市から生活保護受給者Aさんの下に届きました。Aさんは「京都市の職員さんが企業年金を受給するよう勧めてきたんです。私はそれで受給手続を行いました。職員さんからは『受給の葉書が来たら申告してもらいます。』と一度言われましたが、その後は一切確認を求められませんでした。その内に通帳に年金が振り込まれるようになり、通帳は職員さんに見せていたのですが『申告をするように』とは一切言われていませんでした。それなのにどうしてこの受給が不正扱いされるのか、納得できません。」と私に訴えました。
2 検討と行動
上記の経過で企業年金を受給していたAさんに不正受給者というレッテルが貼られることは人権侵害に当たると考えました。そこで、生活保護法78条1項に基づくこの返還命令処分について、京都府に対して不服審査請求を行いました。審査請求書の中で、「保護の実施機関たる京都市が被保護者であるAさんに対し、申告の指示を十分に行っておらず、Aさんが指示に故意に応じなかったという事情は見当たらない。作為的な申告が行われた、虚偽の説明が行われた、虚偽の収入申告書が提出された等、生活保護法第78条1項がその適用を予定するような事情やこれと同視すべき事情はない。よって不正な手段により保護を受けたという法的評価は当たらず、本件処分は法解釈及びその適用を誤ったものであり違法である。」と強調しました。
3 処分取消の連絡
その後しばらく経過してから、京都府より「京都市の担当部署から、返還命令処分を取り消す旨の連絡が入りました。」と私に電話連絡がありました。この結果に、Aさんも一安心されました。
4 最後に
この件は、Aさんが頑張って声を上げたことで良い解決になりました。しかし、声を上げられない生活保護受給者も沢山おられるのではないでしょうか。生活保護受給者を行政が敵視することは見過ごせないという思いです。憲法25 条1項を守る闘いに私も力を尽くしたいと思います。