1 事実経過
本件は、生活保護を受給していたAさんが、交通事故にあった事案です。同交通事故によりAさん及び相手方双方に損害が生じ、Aさんが相手方に対する不法行為に基づく損害賠償請求権(以下、「請求権①」という。)を取得し、相手方は、Aさんに対する不法行為に基づく損害賠償請求権(以下、「請求権②」という。)を取得しました。
請求権①については、相手方及びAさんの間で和解が成立し、相手方からAさんに対して慰謝料相当額として27 万7200円が支払われました。
他方、請求権②については、全く、紛争の解決がなされていない状態でした。
2 生活保護法63条に基づく生活保護の返還
生活保護法63条は、被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときに、保護の実施機関の定める額を返還するよう定めています。
本件のような交通事故の場合、請求権①に基づく支払がなされたとしても、その後、請求権②に基づく請求が行われた場合、特に生活保護受給者など、支払能力が無い場合には、請求権①で受け取った金額から支払いを行わざるを得ません。
しかし、京都市深草福祉事務所長は、生活保護法63条に基づく返還金の額を26万9200円と定める処分を行いました。Aさんは、行政から、支払うよう指示をされたため、やむを得ず、26 万9200円につき納付を行い、納付後に請求権②の支払ができず、相談に来られました。
3 審査請求
京都市深草福祉事務所長の本件処分について、審査請求を行い、審査請求人が受け取った上記27万7200円は同人の「資力」(生活保護法63 条)として計上すべきではない等あらゆる角度から主張を行ったところ、京都市深草福祉事務所長は、本件処分を、職権で取り消しました。
その結果、Aさんが、納付した26 万9200円の返還を受けることが出来ました。行政が行った処分でも、絶対に正しいとは限りません。不当な処分が行われたと思ったときは、ご相談にお越し下さい。