京都第一

[事件報告] 公務災害で休職中の地方公務員の給与支給遅れに遅延損害金の支払いを命じる判決

2022 年4月8日、大阪高等裁判所で、公務災害で休職中の一般職の地方公務員に対して後から一括して支払われた給与について、各月の本来の支給日から実際の一括支給日までの確定遅延損害金151万円余りの支払いを命じる判決を獲得しました。

地方公務員には、私傷病で休職中は、1年に限り給与の80%が支払われ、その後は地方職員共済組合からの傷病手当金が支給されます。

一方、傷病が公務災害に相当するものである場合は、当初から100%の給与が支払われます。この点、公務災害認定の手続は、地方公務員災害補償基金支部が行政処分として公務災害の認定を行い、具体的な公務災害補償の請求権はその後にしか発生しません。給与については、本来は各月の支給日に支払われなければならないはずですが、実務運用としては、(メンタル疾患が典型ですが)、公務災害の申請から認定まで優に2~3年はかかり、後に公務災害と認定された場合、その時点で未払の給与を遡ってまとめ払いされます。その間は生活の保障がされない厳しい生活を強いられます。

今回の事件は、このまとめ払いされた給与について、各月の本来の支給日から実際のまとめ払いの日までの確定遅延損害金151万円余りを請求したものです(なお、公務災害の申請自体も代理して担当していました)。

地裁ではまさかの敗訴判決でした。理由は、休職中の給与は、地方公務員法が定める給与ではない、という理由でしたが、法の解釈を誤っていると思われました。そこで、控訴したところ勝訴したものです。判決は、休職者給付の「給与」=一般の職員に支給される給料等と同じ賃金だと明言し、労基法24条2項が適用され、公務災害認定が支給の要件ではないことから、休職者に対する給与も、一般の職員の給与と同じ支給日を支払期限とする、としました。

上記のように、地方公務員の公務災害認定は、非常に動きが遅く、何年も待たされるのが現状です。本判決は、公務災害の認定請求に長時間を要するのが常態化していることから、事案によっては数百万円に上る追加請求の根拠になります。遅々として進まない公務災害認定の実務に警鐘を鳴らし、人員補強や制度改革など、迅速化に向けた改革を迫るものと言えます。

担当は尾﨑彰俊弁護士と渡辺です。

記者会見の様子

記者会見の様子

「京都第一」2022年夏号