先般、不動産登記法の改正と相続土地国庫帰属法の制定とがありました。後者も、一定の要件のもとで相続により取得した土地を国に引き取ってもらうことができるという新しい制度を創設するもので重要な法律なのですが、本稿では前者について簡単にご説明します。
これまで、相続により不動産を取得しても登記の名義人を変更する義務はありませんでした。そのため、登記上の所有者が実態とは異なるということが少なくなく、例えば何代も前の先祖の名義のままになっているという不動産も散見されました。そうなると、いざその不動産を処分しようとしても、現在の所有者が誰であるのか分からなかったり、たくさんの相続人に枝分かれしていたり、中には連絡のつかない人もいたりして、結局処分を諦めるような例も出てきます。
そこで、改正法では、相続等により不動産の所有権を取得した人は、相続の開始・所有権の取得を知った日から3年以内に所有権の移転登記をしなければならないことになりました。仮に遺産分割協議が長引いて所有者が決まっていなくても、とりあえず同期限までに登記をしなければならず、協議が成立した後で改めてその内容に沿った登記を行うことになります。違反には10万円以下の過料(罰金のようなもの)が定められていますが、登記官(法務局)に相続人であると申し出れば、後は登記官(法務局)の方で登記をしてくれます。
また、これまでは、不動産を所有している人の住所や氏名に変更があった場合も、やはり登記の内容を変更する義務はありませんでした。そうすると、いざその不動産を処分しようとしても、まずは住所や氏名の変更手続きを行わなければならなくなり、思わぬ時間がかかってしまうこともありました。
そこで、改正法では、住所や氏名に変更があったときは、変更があったときから2年以内に変更登記申請をしなければならないということになりました。こちらも違反には5万円以下の過料が定められています。
改正法の施行日はまだ確定していませんが、登記をめぐる実務の大きな変更になりますので、いまから頭に置いておいてはいかがでしょうか。