京都第一

持続可能な再生可能エネルギーの推進に向けて
~パーム油発電やメガソーラー発電の欺瞞~

地球温暖化は、既に世界各地に気候大災害をもたらしています。国際社会は、地球の平均気温の上昇を産業革命前から1.5℃に抑え(パリ協定)、2050年にはCO2排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)に削減するとの目標に向かって経済的にも競争を始めています。

米国バイデン政権は、前政権から明確に気候外交を転換し、EUとともに、コロナ禍からの経済再建に環境問題への取り組みも併せて行おうとする「グリーンリカバリー政策」を打ち出し、再生可能エネルギーの飛躍的拡大に動き出しています。他方、日本では、未だ原子力と火力に依存するエネルギー政策から脱却できておらず、再エネへの大胆な転換が求められています。

ところが、固定価格買取制度(2012年~)による無配慮な投資誘導により、自然環境や生活環境に悪影響をもたらす発電事業が全国で問題になり、京都でも、パーム油発電所や山間部でのメガソーラー(大規模太陽光)発電所の建設が問題になっています。

パーム油発電とは、植物油であるパーム油を燃料として発電するバイオマス発電の一種ですが、プラント開発のために東南アジアで大量の森林伐採等が行われるため、実際のCO?削減効果は限定的です。また、発電時に独特の悪臭と騒音を伴うことから、福知山市で稼働していたパーム油発電所では、地元住民107名が2020年7月、公害調停を申し立て、その結果、2020年12月に業者は事業の完全停止を表明しました。

舞鶴市でも、市が後押しする大規模なパーム油発電事業が計画されていましたが、弁護士会を通した問題提起や地元の運動などにより、事業は白紙撤回されるに至りました。

また、南山城村では、大規模な森林伐採を伴う山間部でのメガソーラーが問題となり、開発による土砂災害の危険の増大などを住民が訴えて、行政に不服申立を行い、開発行為の許可の取消を求めています。

投資誘導を優先するあまり再エネの名を借りた環境破壊が行われれば、本末転倒です。現在、エネルギー業界では洋上風力発電のポテンシャルが注目されていますが、環境負荷を低減することを常に意識し、真に持続可能な再エネ事業の推進を追及しなければなりません。

「京都第一」2021年夏号