京都第一

パソコンログや録音で残業代請求

本件は、Aさんが、勤務先会社に対して、未払い残業代と長時間残業によりうつ状態となったことについて、安全配慮義務に基づく損害賠償請求を求めて提訴した事案です。

本件の重要な争点は、残業の有無でした。会社は、タイムカードによる時間管理を行っていなかったため、Aさんは業務で使用していたパソコンのログデータ(パソコンを起動した時間とシャットダウンした時間がわかる)により、残業の立証を行いました。これに対して会社は、①Aさん以外の従業員もパソコンを使用していた、②Aさんが記載した業務日報の退社時間が定時であること、等を根拠にAさんは残業を行っていないと主張しました。

Aさんは、残業時間中にICレコーダーで自分が業務を行っている状況を録音していました。勤務先ではラジオ放送が流れており、ラジオ放送された曲が録音データには録音されていました。ラジオ放送された曲はホームページで日時が確認できます。また、Aさんが来客対応した様子や、上司からAさんに対して業務指示を行った様子も録音されていました。第一審では、Aさんが提出した録音データなどあらゆる証拠を踏まえて、Aさん主張の残業時間を概ね認めましたが、安全配慮義務に基づく損害賠償請求は否定しました。

第一審判決の問題点は、うつ状態の発症直前の3か月間に、ひと月あたり概ね120時間の時間外労働を行っていることを認定したにもかかわらず、うつ状態の発症の原因が長時間労働にあるとはいえないと認定したことでした。Aさんは控訴し、このような問題点を指摘した上で、労災の認定基準やカルテに照らしても不当な判決であると主張した結果、大阪高等裁判所は第一審判決の判断を覆し、うつ状態の発症の原因が原告の長時間労働にあることを認め、治療費、休業損害等安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求を認めました。

弁護士 尾﨑彰俊、高橋良太

「京都第一」2021年新年号