ごあいさつ:2018年度京都弁護士会会長に就任しました
この4月から京都弁護士会の会長に就任しております。4人の副会長とともに、この1年間会務の運営に奮闘してまいりますので、皆さまのご支援、ご協力を賜りますよう、どうかよろしくお願い申し上げます。
会長に就任するにあたり、2つのことをお約束したいと思います。
ひとつは、弁護士は市民にとって身近で信頼できる存在でなければなりません。法的トラブルに巻き込まれたときに、正当な権利が守られず、泣き寝入りするようなことがあってはなりません。弁護士会では市民がすぐに弁護士に法律相談ができるよう、京都府内に合計11か所(京都市内2、北部7、南部2)の法律相談センターを設置しています。また、社会の変化に伴い生じる新たな法的トラブルにも対応できるよう日々研修に励んでいます。お悩みを抱えられたときには、まずは気軽にご相談下さい。皆さまの悩みに誠意をもってお応えします。
もうひとつは、弁護士は、市民の人権が侵害されるおそれがあるときは、力を結集してこれに立ち向かいます。過去、最大の人権侵害をもたらす戦争という大きな惨禍がありましたが、戦後わが国はその痛切な反省の上に立ち、日本国憲法の下で民主主義国家としての道を歩んで来ました。弁護士は、民主主義を支えるため、弁護士法に定められた「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という弁護士の使命の実現に努めて参りました。昨今、特定秘密保護法、安保関連法制及びテロ等準備罪(共謀罪)につき、弁護士会が反対の立場で活動しているのもその一環です。
今、折しも自衛隊を憲法に明記するという改憲案が浮上しています。ここで考えなければならないことは、憲法に明記しようとする自衛隊とはいかなるものなのかということです。自衛隊については様々な意見があるところですが、一昨年安保関連法制につき、憲法上、集団的自衛権の行使が認められるかという議論が巻き起こりました。そして、集団的自衛権の行使を可能とする閣議決定という解釈改憲により安保関連法制を成立させた今、自衛隊は海外において武力の行使が可能な存在になっています。こうした現状において自衛隊明記案は、集団的自衛権を行使する自衛隊を憲法上容認することを意味し、閣議決定による解釈改憲を追認し、日本国憲法の恒久平和主義の内容を実質的に変更することなります。これは、わが国の安全保障問題をどう考えるかということにつながりますが、主権者である国民に対し、少なくとも自衛隊明記案がそのような内実をもつものであることをきちんと説明する必要があるでしょう。基本的人権を守るために憲法により権力を縛るという立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重をする日本国憲法の基本原理から、わが国の将来を大きく左右することになる憲法9条の改正の意味をわかりやすく提示し、皆さまと一緒に、戦争の時代を生きた父母とこれからの時代を生きる子々孫々を思いながら、この問題を考える1年にできればと思っています。