交通事故の裁判で、警察の捜査とは異なる事実を認めさせ、後遺障害も認めさせました
原付で走行中に自動車に衝突された
被害者Aさんが、原付自転車で走行中、信号のない交差点で右折しようとしたところ、後方から走行してきた相手方の自動車がAさんの原付に衝突するという交通事故が発生しました。
この事故により、Aさんは後頭部打撲等の傷害を負い、その後も頸部や腰部のしびれや痛みなどの後遺症に悩まされることとなりました。ところが、自賠責は後遺障害「非該当」という判断でした。
さらには、Aさんが交差点直前で突然右折してきたとして、過失が7割もあると主張されたことから、Aさんは納得できず、裁判に踏み切りました。
警察作成の図面にない駐車車両を認めさせました
本件で苦労したのは、Aさんの走行経路でした。事故当時、Aさんが走っていた道路上には路上駐車車両があったため、Aさんは、駐車車両をよけて中央線寄りを走行していました。しかし、警察が作成した図面には、路上駐車車両は記載されず、Aさんは道路の左端を走行し、交差点直前で、相手方の自動車の前を横切るようにして突然右折してきたかのように書かれていたのです。交通事故の際に警察が作成する図面(実況見分調書といいます)は、裁判ではもっぱら信用性が高いとされ、これを覆すことは容易ではありません。
しかし、判決では、実況見分調書の作成の際、加害者のみの立会いであったことなどから、その調書には信用性がないとして、Aさんが証言したとおり、路上駐車車両の存在と、中央線寄りを走行していたという走行経路を認定しました。そして、相手方には、「交差点30m内の部分での追い越し禁止違反」という重大な過失があると認め、9割の過失を認めさせることができました。残念ながらAさんにも1割の過失があったとされましたが、相手方の主張を大きく排斥しました。
さらに、本件では、頸部や腰部の後遺症について、自賠責の「非該当」の判断を覆して、12級の認定を勝ち取りました。
弁護士 岩橋 多恵