事件報告:諦めない交通事故の 損害回復
Aさんは公立学校の教員でした。ある日、原付バイクを運転していたところ、対向車線を走っていた自動車がセンターラインをはみ出したため衝突しました。一命は保ったものの顔面骨折、片足全体の複雑骨折に加えて脳挫傷等の重篤な障害を負い、外貌醜状(7級)、視野障害(併合8級)、脳外傷に由来する認知障害等(9級)、腕の可動域制限(10級)、足の可動域制限(10級)、といった後遺症が残りました。
保険会社は示談交渉で示談金を提示していましたが、到底納得できる金額ではなく、訴訟に踏み切りました。
争点は「逸失利益」
訴訟では、Aさんの逸失利益額(主には得られるはずだった賃金分の損害額)が争いになりました。Aさんが公務員であり、本来の定年退職までの賃金表が正確に定められていたことから、それを援用して詳細な逸失利益の主張をしました。定年後の再雇用で見込まれた賃金額についても、期間や賃金額が詳細に定められていることから、その期間・金額を主張しました。その結果ほぼ主張が認められました。後遺症の影響については、事故後、一度は教壇に復帰したものの、勤務に耐えられずに退職に至ったことから、状況を詳細に主張したうえ労働能力喪失率100%を主張しました。さすがにこの主張は認められませんでしたが、裁判所は後遺症の状況を総合的に勘案して65%(ほぼ6級相当)の高率の労働能力喪失を認定しました。
慰謝料についても、入通院による420万円に加え、後遺症についての詳細な主張・立証の成果で、後遺症慰謝料として1440万円の高額が認容されました。
また、後遺症によって生じる生活上の問題点についても詳細に立証したところ、自宅改装費用80 万円も認められました。弁護士費用も約1割が認められました。
判決では、これら損害賠償額約6700万円に加え、解決までの約7年分の遅延損害金(年利5%×7年=35%分)が付加され、9000万円以上の賠償金が支払われることになりました(『交通事故民事裁判例集』 46巻6号1522頁掲載)。
このように、交通事故によって負ったけがの大きさからすれば多額の損害賠償金が支払われるべき事案でも、保険会社はかなり低い金額を提示してくるのが常です。諦めずに弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士 渡辺 輝人