書籍紹介:『ワタミの初任給はなぜ日銀より高いのか?―ナベテル弁護士が教える残業代のカラクリ』
以前から、労働現場で違法な「名ばかり管理職」が導入され、昇格すると途端に残業代が1円も支払われなくなり、かえって賃金が下がる話はあります。近年はさらに様々な制度が脱法的に導入されて新卒の労働者まで残業代が支払われない風潮が広がっています。
これが端的に表れるのがワタミ(の子会社のワタミフードサービス)の大卒初任給です。同社の大卒初任給は24万2326円で、これはなんと日本銀行の総合職の大卒初任給20万5410円よりも高額ですが、その裏にはカラクリが潜んでいます。
この本は、この話題を皮切りにして、残業代をめぐる社会の情勢(未払残業代があるのに請求できないのはなぜなのか、公務員バッシングと残業代の関係、過労死と残業代の関係など)を分析します。
その後、公表されている企業の募集要項を基に、残業代を軸にしながら年間の労働日数(従って休日数)の大小、所定労働時間数の大小、残業代の単価の大小などを分析していき、ワタミの高額初任給のカラクリを解き明かします。
そこからさらに年俸制、固定残業代制、変形労働時間制、事業場外みなし労働時間制、名ばかり管理職など、残業代を払わない言い訳とされる様々な制度について解説し、実は多くの場合が残業代を請求できる違法な運用であることを解明します。
そして、残業代を請求するための証拠集めの方法、残業代の計算方法まで詳しく解説し、最後に具体的に権利を行使する方法までカバーします。
ひと言で言うなら「残業代を軸に会社と社会を分析し、権利を行使するための本」という、今までありそうでなかった本です。お近くの書店でも購入できますので、是非お手にとって頂ければと存じます。
「京都第一」2015年新春号