事件報告:高年齢者の雇い止め事件の解決
継続雇用基準を満たさないとの理由による雇い止め
Tさんは、京都を代表する大手企業にIT技術のスペシャリストとして中途採用されていましたが、2010年9月で定年退職となり、継続雇用制度に基づき再雇用されました。契約期間は1年ですが、毎年更新によって65歳になるまで勤務を続けられると期待していたところ、1回目の更新をした後から、会社のTさんに対する成績評価は恣意的に極端に悪くされ、また上司からの退職勧奨も強まり、このため体調も悪化させました。2回目の更新時、評価が協定で定める基準に達しないという理由で雇い止めとなりました。
法律は高齢者の雇用の安定化を求めているが
「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」は、企業に、労働者を65歳未満まで雇用する措置を講じることを義務づけました。しかし、企業が、組合もしくは労働者の過半数代表者との間で60歳定年後の継続雇用についての基準を定めた場合は、その基準を適用して継続雇用労働者を限定することができるとされていました(2013年4月1日改正法施行以降、新たにこのような協定を結ぶことはできなくなっています)。このため、協定に定める継続雇用基準を厳しくすることによって、実質的には多くの労働者が継続雇用されないという実態が蔓延していました。このような実情が放置されれば、高齢者の雇用を安定させるという法の理念は没却されてしまいます。
雇い止めに抗して
そこでTさんは会社を相手に雇い止めは無効であるとし、雇用関係継続の確認と賃金支払いを求め訴訟を提起するとともに、監督署には体調悪化について労災認定請求をしました。その後、監督署では2013年2月に労災認定を受けました。訴訟の方は、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)の力強い支援も得て、関係者の証言などの証拠調べを終えた時点で、裁判所からの勧告に基づき、2014年3月、勝利的和解が成立し解決しました。
雇い止め事件が横行しています。このような場合はまずは事務所までご相談に来て下さい。
弁護士 森川 明
弁護団弁護士 谷 文彰、渡辺 輝人