京都第一

特集:集団的自衛権と京丹後経ヶ岬米軍基地の問題点

特集:集団的自衛権と京丹後経ヶ岬米軍基地の問題点

特集:集団的自衛権と京丹後経ヶ岬米軍基地の問題点

集団的自衛権

尾﨑:最近、「集団的自衛権」を行使できるかどうかについて話題になっています。そもそも「集団的自衛権」とは一体どういうものなのでしょうか?

奥村:これまで日本政府は「集団的自衛権」とは、「自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、外国に対する武力攻撃を、武力をもって阻止する権利」と定義し、集団的自衛権の行使については、「憲法九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するための必要最小限度の範囲にとどまるべきであると解しており、集団的自衛権を行使することはその範囲を超える」と憲法上は行使できないと答弁してきました。

尾﨑:一方で、「集団的自衛権」は国際法上、国家に認められた権利であるとの論調もありますね。

奥村:確かに、国連憲章51条は「集団的自衛権」について定めています。しかし、これはあくまで、国連による制裁措置が行われるまでの限定的な期間に限り、緊急やむを得ず行う最小限度の反撃の場合を定めているだけで、あくまで例外的な場面とされています。「集団的自衛権」と国連が行う制裁措置とは違うものです。

尾﨑:そうですね。国連が行う制裁措置は「集団安全保障」と呼ばれます。これは、国連加盟国どうしの紛争に対して、他の加盟国全体で協力して、国連の枠組みの中で、紛争の集団的な解決を目指すものです。
 一方「集団的自衛権」は、いくつかの国で軍事同盟を結び、同盟外の「敵国」からの攻撃に対して、同盟国が一体となって武力行使をするもので、紛争解決のあり方としては根本的に異なります。集団的自衛権の実態はどのようなものですか?

奥村:これまで「集団的自衛権」を名目に武力行使された事例はいくつかあります。例えば、60年代にアメリカが起こしたベトナム戦争も、70年代に旧ソ連が行ったアフガニスタン侵攻も、いずれも「集団的自衛権」の行使であると正当化しました。しかし、実態は、大国による軍事支配のための侵略戦争でした。
 「集団的自衛権」が行使できるとすると、このような違法な戦争や武力行使に、日本も一緒に乗り出して行くことができるようになります。

尾﨑:一方で、政府は、「集団的自衛権」の行使を認めたからと言って、地球の裏側の戦争に自衛隊が出て行くことにはならないと言っていますよね。

奥村:「集団的自衛権」の議論のきっかけとなった、安保法制懇報告書では「地理的な限定を設けることは適切でない」と明確に書かれています。また与党協議の「国民の権利が覆されるおそれがある」場合には、アメリカが世界中で行う武力行使と一体となって活動することを意味しています。安倍首相は九条を空文化しようとしているのです。

X バンドレーダー

尾﨑:九条の空文化と言えば、米軍基地の問題がありますね。京都府でも、京都府の北部、京丹後市に、米軍基地を作るという計画が昨年2月末に発表され、この5月末、住民には前日まで知らせず、抜き打ち的に工事が開始されました。この米軍レーダー基地には、中国・北朝鮮などから米国に向けて発射されたミサイルのうち、グアムに向かうものを察知するためのレーダーが設置されます。
 米軍にレーダー基地を提供することで、地元の京丹後市や京都府内にどのような危険が及ぶと考えられますか。

奥村:ある国が米国を直接攻撃することは想定しにくいのですが、仮にミサイルを米領グアムに向けて発射するとして、まず京丹後のレーダー基地を先に破壊し、その後ミサイルを上空に飛ばすのではないでしょうか。むしろ、米軍にレーダー基地を提供することそのものが、京都、特に地元の京丹後市に危険をもたらします。

地位協定

尾﨑:沖縄などでの米兵による犯罪の報道を聞くと、米軍が駐留することも心配です。

奥村:このレーダー基地には米兵が20人、米軍軍属が140人ほど常駐すると言われています。米兵・軍属が事件や事故を起こしても、日米地位協定という強固な壁があり、日本の警察権や裁判権など、主権の行使が阻まれています。2年前、沖縄で米兵が車で死亡事故を起こし、その後、基地内に逃げ込み、警察の呼び出しに応じず、出頭しなかったということがありました。このときは、町長をはじめとして、多数の町民がデモを行って、ようやく呼び出しに応じさせることができました。それ以外にも、飲み代を踏み倒す、タクシー代を払わないで基地内に逃げ込むなど枚挙にいとまがありません。

尾﨑:それに加えて、日米間では裁判権密約が締結されています。米兵が起こした事件や事故は、重大事件を除いて、原則起訴をしないという、とんでもない密約です。国の主権を他国に売り渡しており、屈辱的です。

奥村:沖縄の米軍基地にしても、京丹後のレーダー基地にしても、地元住民の反対が大きくなれば存続はできません。私たちも、地元の住民の方々と一緒に、米軍レーダー基地を撤回させる運動に頑張って取り組んでいく決意です。

尾﨑:そして、米軍基地の根本の原因となっている日米安保条約を廃棄させる取り組みも一緒に進めていかなければなりません。

「京都第一」2014年夏号