京都第一

特集:高齢化社会における当事務所の役割

特集:高齢化社会における当事務所の役割

1 ある高齢者の相談

持病の悪化により寝たきり状態にある認知症のAさんは、病院に入院中でしたが、長年介護をしてきた夫が急死され、子どもがおられなかったこともあり、身寄りのない状態になりました。夫の弟が、Aさんと夫の財産を事実上管理していましたが、継続的に財産を管理することは負担に感じており、また夫の相続に関する手続き、今後の転院等に伴う病院との医療契約、年金や健康保険等の手続きを行うことが困難であったため、当事務所に相談がありました。

Aさんは、認知症ではありましたが幸い簡単な意思表示はできる状態にありました。そのため、当事務所の弁護士がAさんと面談し、成年後見人を引き受けることになりました。

Aさんの成年後見の申立に要する弁護士費用は、法テラスの法律扶助制度を利用しました。その後、家庭裁判所調査官がAさんと面談して、成年後見の申立の意思があることを確認しました。

2 後見人ができること

まず、弁護士は、Aさんの成年後見人に選任された後、Aさんの夫の弟から、AさんとAさんの夫の財産の引き継ぎを受けました。弁護士は、Aさんの夫の兄弟には相続放棄をお願いし、Aさんが単独で相続をすることになったため、自宅不動産の登記名義変更、預貯金の名義変更などを行いました。次に、Aさんの収入の確保です。Aさんは国民年金しか受給していなかったため、夫の遺族年金の申請を行い、今後の収入を確保しました。

また、周囲に迷惑がかからないように、夫が使用していた車を処分して月極駐車場を解約し、自宅内の食料品を廃棄し、溜まった郵便物の整理、水道や電気・ガス、新聞購読の停止なども行いました。

さらに、現在、病院は厚生労働省の政策により長期入院を受け入れないため、弁護士は、Aさんの転院が必要になる都度、転院先病院との面談を行い、治療費や入院諸費用の支払いを行っています。

3 高齢者の尊厳を守る~出張相談にうかがいます

高齢や認知症を原因として判断能力が低下しても、介護や医療が適切に受けられ、社会に迷惑をかけることなく、尊厳のある生き方をしたい。これは高齢者の当然の願いです。左記事例は一つのケースですが、成年後見人が、自ら動くことができない高齢者の尊厳を守るお手伝いをする仕事であることを感じさせるケースでした。

高齢者への支援を確保するためには、高齢者自身が自ら積極的に動いて解決できないことから、親族や知人、介護や医療関係者の方など身近な方の援助も必要です。高齢者本人に当事務所をご紹介いただき、了解の上ご連絡をいただければ、自宅や病院、介護施設への出張相談を行うこともできます。

病院、介護関係者の方からは、時折、高齢者の財産を事実上預かっているというお話を伺うこともあります。法的に適切な状態ではなく、トラブルに巻き込まれるおそれもありますので、速やかに当事務所までご相談ください。

4 高齢化社会における様々な法的ニーズに応える

当事務所では、これまでも成年後見や任意後見、財産管理、また遺言の作成と執行、遺産分割協議や遺言無効確認訴訟などに取り組んできました。

高齢化社会が進むなかで、自分の財産をどう管理し、また死後家族にどのように譲り渡すのかという関心がますます高まっています。また、判断能力が低下しても、適切に介護や医療を受けることは当然の権利です。

当事務所では、こうした高齢化社会の到来にあたり、必ずご相談・ご依頼いただく皆様のお力になれるよう日々研鑽を重ねておりますので、いつでもお気軽にご連絡、ご相談ください。

「京都第一」2013年新春号