京都市政を刷新して、住民のいのちと暮らしを守る京都市に
大河原 あけましておめでとうございます。
中村・筒井 おめでとうございます。
大河原 今日は「市民ウォッチャー・京都」事務局長の中村和雄弁護士と、京都市職員労働組合青年部書記長の筒井美也子さんをお招きし、京都市政の問題点についてお話をお聞きしたいと思います。
我慢して育った世代
大河原 まず筒井さん、よく若者の組織離れが話題になりますが、京都市職員の若者の状況はいかがですか?
筒井 私の職場は市立病院で、看護師をしています。職場によって傾向は違いますが青年層の場合、たとえば本庁では市職労に加入しているのはおおよそ三分の一程度です。また、組合等に全く加入していない人も三分の一ぐらいいます。
人員削減でどの現場も人が足りず、ノー残業デー以外は日をまたいで仕事をしていたり、トップダウンだから思いつきで指示され対応に振り回される、などの実態も聞いています。
でも、いまの二十代はもの心ついたときから景気が悪く、欲しいものも我慢してきた世代だからか、しんどい状況も我慢して「もういいわ」とあきらめている人も多いように思います。
原発との利害関係は非常に大きい
大河原 さて、昨年は何と言っても東日本大震災と福島第一原発の事故で、大規模災害時に地方自治体が住民の生命や安全、暮らしを守れるかどうかが問われ続けた一年だったと思います。京都市でも震災後、京都市防災対策総点検委員会が開催されました。
中村 原発問題はその中間報告で触れられましたが、セシウムが降ってきても琵琶湖は広いから希釈されて問題ないという、とんでもない内容でした。 僕も水俣病裁判に取り組んできましたが、チッソの社長は有明海、不知火海(八代海)は非常に広いから大丈夫だろうと思って水銀を海に垂れ流したわけです。国もそれを追認しました。それがあれだけの被害を生んだのです。
京都市民をはじめとして、たくさんの人が琵琶湖の水を飲んで生活しています。ごくわずかな放射線の体内被曝でも健康被害が出るといわれています。市の見識が問われますね。
筒井 環境政策の部門で、被災地の放射性の瓦礫の受け入れ問題にかかわっている青年部員がいます。被災地の復興を考えると、瓦礫は受け入れる能力がある自治体が受け入れるべきと考える自分がいる一方で、市民からの「受け入れないで」という電話に連日応対しながら、自分も同じ一市民として受け入れるのに抵抗がある。そのジレンマが苦しい、と話していました。
中村 「生み出さない」「運ばない」「記録する」という、放射性廃棄物に関する三原則があります。
瓦礫処理ができないから全国で、ということですが、瓦礫のなかには高度に放射能汚染されているものもあります。放射性物質は本来、その場で処理をするのが原則ですから、福島のなかで処理できるよう国がきちんと援助すべきです。放射性物質を拡散することに安易に「わかりました」という自治体の姿勢もおかしいですね。
大河原 若狭湾の原発への対応も、京都市に課せられた問題だと思います。
中村 いまの市長は国がやることだとして口をつぐんていますが、住民の命と健康を守るのが首長の一番の課題です。京都市はいまこそ若狭湾の一四基の原発を全部廃炉にすべきと全国に発信し、電力会社につきつけるべきです。
実は京都市も、左京区最北部は若狭湾の原発群から三〇キロ圏内です。原子力安全委員会がヨウ素剤の備蓄を言っている五〇キロ圏内には市のかなりの部分が入ります。さらに、福島第一原発から六〇キロの福島市でも、毎時一五〇マイクロシーベルトというとんでもない量の放射性セシウムが検出されています。六〇キロだと京都市がほとんど入りますから、利害関係は非常に大きいですね。
市政刷新に決意を述べる中村和雄弁護士
黒字でも値上げする京都市国保
大河原 京都市では国民健康保険も大きな課題です。筒井さん、いまの医療現場の実態はいかがですか?
筒井 頬に悪性腫瘍ができても「お金がないから」とそのまま無治療で放置し、末期で余命一か月もないような状態で、私が働く内科病棟に入院された方がいました。保険料が払えず、糖尿病の治療を中断した人もいます。
保険料を下げて受診しやすくしたらもっと長く元気で地域で生活してもらえるのに、と思います。
大河原 京都市国保については、財政難ばかりが強調されていますが実際はどうなんですか?
中村 いまは国保料が非常に高い上になかなか払えないのが生活実態です。京都市では国保二二万世帯のうち五万世帯が滞納状況です。
国保の累積赤字が大きいことは間違いなく、いずれそれをきちんとしなければなりません。しかし単年度で見れば、この三年間、黒字が続いています。それでも値上げをしています。これだけ国保料が払えない人が増えている状況ですから、せめて値上げはせず、むしろ引き下げるべきです。これはできるはずです。
大河原 貧困からくる保険料未払いと診療抑制は、どうすれば解決できるのでしょう。
中村 低所得で国保料が払えなくても無料で医療を受けられる制度を拡大していくこと、払える国保料に引き下げること、そして払えるように経済を活性化することが大きな課題だと思います。
弁護士 大河原 壽貴
公契約条例で地元経済の活性化を
大河原 経済の活性化という点では、公契約条例が全国で拡がりつつあります。若者の非正規雇用の多さと苦しい生活実態は、私も弁護士の仕事の中で実感していますが、公契約条例の目的の一つは、そのような労働者、特に非正規で働く人たちの最低賃金の引き上げなど、労働条件の改善です。
筒井 私が働く病院で調理師をしている青年部員も、非正規雇用の嘱託職員です。給料が低く抑えられているだけでなく、一年半後には病院食の委託会社が変わることになってしまいました。みんな先のことが不安で、もう次の職探しをしている状況です。
大河原 こうした公的部門の委託は、公契約条例でどう変わるのでしょうか?
中村 いま問題なのは、予算がないからと入札で委託する金額を毎年切り下げていることです。業者も仕事がないから、赤字でも安い金額で仕事を受けてしまう。しわ寄せを受けるのが派遣やパートで働く末端の労働者です。賃金が切り下げられ、あげくに業者が変わって全員クビという悪循環です。 ここを、少なくとも公的部門から、末端での最低賃金を時給一〇〇〇円以上に引き上げる。それは予算上できているはずなので財政的にはまったく問題なく、すぐに実行できることです。
公契約条例にはもう一つ、仕事を地域内の中小零細企業にまわす目的があります。京都市の税金でする京都市の仕事ですから、京都市のみなさんに仕事をしてもらおう、ということです。
大河原 地元の業者の方々にきちんと仕事をしてもらって、雇用や働く条件をまもってもらおうということですね。
若者が意欲的な組織は元気
大河原 当事務所は昨年創立五〇周年を迎えました。そういう歴史の一方で、三五歳の私がキャリアではちょうど真ん中くらいという若い事務所になり、いろんな活動に若手の弁護士が積極的に参加しています。
筒井 市職労でも、青年部は金かかることばっかりしよる(笑)とよく言われます。でも、そういうことを言いつつも、私たちのやろうとする企画に協力してくれます。
中村 第一法律事務所も市職労も、若い人たちが意欲的にいろんな活動に取り組み、それをベテランが温かく支えているわけですね。そういうところは元気です。上から指令して、いやでもみんなそれに従うというトップダウンでは、やる気が起きませんよね。
大河原 脱原発の問題でも、国保料の問題でも、地元経済の活性化の点でも、京都市政を刷新することが重要だということがよくわかりました。当事務所も、京都市政刷新のために力を尽くしたいと思います。
筒井 お互いに頑張りましょう。
大河原 中村さん、筒井さん、今日はどうもありがとうございました。
市政の内側を語る筒井さん