対談:建築労働者の権利を守るために
全京都建築労働組合副委員長
吉岡 徹 さん
書記長
池田 和弘 さん
聞き手:
村山 晃 弁護士・
渡辺 輝人 弁護士
京建労の強さの秘訣
渡辺 今日は、全京都建築労働組合の書記局にお邪魔しました。活動の状況や共同の展望についてお話を伺えればと思います。よろしくお願いします。
村山 さっそくですが、総会議案書を改めて拝見すると、全体として労働組合の組織率が上がらない中で京建労が盤石の組織率を誇っていますね。秘訣は何なのでしょう。
池田 一つは活動のスタイルです。不況でこれだけ仕事がなくなると、一人では対処しきれない問題が出てきます。行き詰まる前にどうやって手をさしのべられるか。この5、6年力を入れているところですし、組合員の方々には、何か問題があったら、とりあえず組合へおいで、と言っています。そういう実績が認められているのだと思います。
吉岡 職人は独立心が強く、一つに団結するのは難しいのです。それでも団結するのは、80年の歴史の重みに加えて、政治的な意識もあります。今、若い人では派遣労働者も増え、年収200万~300万円で働いている人もいます。しかし、600万円以上の年収がないと家庭も子どもも家も持てない。そうすると私たちの仕事はなくなる。仕事がなければ技術も承継できない。私たちの立場からすれば、内需を高める政策をとるのが当然なのです。しかし、派遣労働の問題にしても、そういう当たり前の情報が新聞にも出てこない。全体の生活が潤わないと建設労働者は潤わない、という観点で学習を進めています。
渡辺 不況になると、住宅を建てる方も、安いところへ流れていく。大手に対抗するのは大変ですね。
吉岡 大手メーカーの住宅は決して安くないんですよ。後からオプションが必要になって、結局、割高になっていく仕掛けなのです。
池田 組合としては施主さんに職人の確かな技術を見てもらう機会を増やすしかないです。個々の職人は大手メーカーほどの宣伝をできません。組合が地域に根付いて、組合の職人さんなら良い家を造ってくれる、と認知されることが重要です。
村山 京建労がブランドになる、という考え方ですね。
横行する「偽装請負」に抗して
村山 話題は変わりますが、最近、実態は労働者なのに「請負」で仕事をする「一人親方」が益々増えているようですね。
吉岡 今、職人が自分で労災保険に特別加入しないと仕事をさせない状況が広がってます。(下請)企業も経営が厳しく、請負にすることで労災保険料を負担せす、消費税も仕入れ控除するのです。もっと元請企業の責任を追及しなければなりません。
池田 労働者性については、保険未加入の場合の労災事故での保険適用の問題と元請が倒産したときの賃金支払確保法の問題もあります。運動で幅広く認定された例はありますが、グレーゾーンも沢山あります。しかし、一人「親方」といいつつ、指揮命令権もなければ、職人さんとほとんど同じ仕事をしています。ヨーロッパでは労働者を定義するのではなく、労働者ではない人を定義して、それ以外は皆労働者だ、という考え方の国もあるそうです。そういう方向にしないと問題は解決しません。最近、(上部団体の)全建総連もこの問題の研究を始めました。
渡辺 偽装請負の問題は深刻ですね。個別の事件を担当するだけでは限界があります。一緒に研究会などをやって、現場の実態を告発しながら、運動を作れたらいいな、と思っています。
池田 交流の場を持つのはいいですね。やりましょう。
アスベスト問題
渡辺 最近、アスベスト被害者の会を結成されたようですね。
池田 被害者の方は怒っています。とても意識が高いです。できるだけ早く、事務所にもお願いをして、提訴の準備をしなければ、と思っています。
吉岡 組合員全体に広げていくのはこれからの課題です。全国的には検診を実施すると4%くらいで異常があります。アスベスト被害は独特で、何十年も経って影響が出るので問題意識を持ちにくいのです。組合員が、しっかり検診を受けることを活動の柱にしています。
池田 解体工事は一定規模になると届け出が必要なのですが、届け出をしてない工事が横行しています。アスベスト粉塵を近隣に振りまき、労働者もタオルを口に巻くだけで作業しています。今、曝露している人たちに実際に症状がでるのはこれから数十年後。とても深刻な問題だと思います。
村山 アスベスト問題は、京建労が古くから粘り強い取り組みを続けてこられました。私も、25年ほど前に、大部の資料を見せてもらい検討会に参加したこともありました。ここは京建労の出番です。是非一緒に頑張りたいと思っています。
最後になりますが、京都第一法律事務所も、個々の組合員さんのお力になるため、一層身近な存在になれるよう努力をしていくつもりです。いろいろとご指摘いただければと思っています。今日はありがとうございました。
最後になりますが、京都第一法律事務所も、個々の組合員さんのお力になるため、一層身近な存在になれるよう努力をしていくつもりです。いろいろとご指摘いただければと思っています。今日はありがとうございました。
「京都第一」2010年夏号