[事件報告4]
被害者参加裁判
被害者参加制度は2008年12月に開始された制度で、一定の重大な犯罪について、刑事裁判に被害者や被害者の依頼を受けた弁護士が参加して、意見を述べたり証人尋問ができるようになりました。
当該裁判所では初めての案件で、事件は交通事故ですが、起訴事実は殺人。加害者は泥酔状態で運転し、自車で被害者をはねた後に長距離にわたって被害者をひきずったために被害者を死なせてしまったのです。
本件は、加害者が「人をひきずっているという認識がなかった」と主張する否認事件です。公判が始まる前の早い時期から国選の被害者参加弁護士として被害者の遺族を支援しました。わかりにくい刑事裁判の手続きや、起訴された事実の内容、争点等をご遺族に説明することと、ご遺族の気持ちや意見を検察に申し入れ公判期日に採り上げてもらうように働きかけることが主な活動になりました。遺族の方々にとっては気軽に質問して説明をしてもらったり、遺族の表現しにくい思いを言える弁護士がいるということで、従来から指摘されてきた「被害者が裁判から排除されている感じ」をかなり緩和することができたと思います。
後半は損害賠償の申立を行い、一から民事訴訟を起こす精神的経済的な負担をなくすことができました。今後も被害者参加制度が適切に運用されることで刑事裁判全体に良い影響が出ることを期待します。
「京都第一」2010年新春号