京都第一

10・29平和憲法を守る音楽と講演の集い

「戦争はいやだ」が平和の原点

10・29平和憲法を守る音楽と講演の集い

「戦争熱症候群―傷つくアメリカ社会」

2004年から毎年続けている憲法を考える集い。2008年も「平和憲法を守る音楽と講演の集い」を10月29日、ハートピア京都で開催しました。

平和憲法を守る音楽と講演の集い 音楽では中国笛奏者でテノール歌手の楊雪元(よう・せつげん)さんを、講演にはアメリカ在住日本人が見た戦争当事国の実状を聞いて日本の進むべき道を考えようと『戦争熱症候群─傷つくアメリカ社会』の著者・薄井雅子さんをそれぞれ招き、約200人の参加でホールはほぼ満席になりました。

楊さんには視覚障害があります。笛は9歳の時、将来心を閉ざさずリラックスして生きていけるようにと父親が教えてくれたものでした。みるみる才能を発揮し、大学で声楽とも出合いました。「演奏でみなさんにリラックスしてほしい。中国にいろいろな笛があることも紹介したい」と話します。

白杖に穴をあけた自作笛を演奏する楊さん 演奏は9歳から使い続けている横笛で始まり、土笛、ひょうたん笛などさまざまな笛を使い「古時計」「涙そうそう」などおなじみの曲でひきつけます。声楽では「オーソレミオ」などに続き圧巻は「北国の春」。「中国では日本の演歌を声楽のように歌います。最初の『しらかば~』は長く伸ばします」と楊さん。それは驚きの約45秒間。豊かな声量で会場を圧倒し、アンコールの拍手が鳴りやみませんでした。

続いて講演に立った薄井さんは、移住した翌年が9・11同時テロだったといいます。マスコミなどがすぐに「戦争だ」「反撃だ」と報道し、本国を攻撃された経験のないアメリカ人は「一晩で戦争一色になった」と話します。そして「大量破壊兵器」などのフレーズで徹底して国民に恐怖をあおった様子を告発しました。

薄井さんによるレポート またアフガニスタンやイラクで戦争を担ってきた兵士の多くが、資格や技術、入隊一時金に誘われた貧しい若者だと指摘し、その実態をレポート。

さらに、これらは結局石油などの利権のために外国に都合のよい政権をつくる戦争だったと述べ、そこに給油することは国際法にも反した戦争犯罪に手を貸す行為だと強調しました。

実際アメリカの軍需企業は大もうけだといいます。他方、760万人が失業し、健康保険もなく医療費による自己破産も多いという国民生活。それでも税金の半分を軍事費が占め続ける。

「アメリカ人の戦争観は爆撃機のパイロットの目線です。下で何が起こっているかはわからない。日本人の目線は下。空襲で逃げまどう。だから『戦争はいやだ』と身をもって体験された方の存在は宝です。それが憲法9条、平和運動の基本です」と薄井さん。

さらにまた、イラク派遣を拒否したワタダ中尉や、「若者には将来があるから自分をとってくれ」と新兵募集事務所前で座り込むおばあさんたちなど平和を願う運動を紹介。最後に、薄井さんも「平和憲法を守る在米日本人の会」を立ち上げたと報告しました。

参加者からは「珍しい笛と美しい音色を堪能しました。声楽も圧倒されました」「アメリカの本当の姿がよくわかりました」「日本で平和を守る運動が世界平和につながっていることを改めて感じました」などの感想が寄せられました。

講演する薄井雅子さん

「京都第一」2009年新春号