司法改革
今年が司法改革の正念場
司法制度改革推進本部は、平成11年12月から3カ年ですべての改革を終了することになっています。今年はその3年目で、大変重要な年になります。裁判員制度、刑事裁判の改革、弁護士報酬の敗訴者負担、誰もが容易に司法にアクセスできるようにする司法ネットの整備、被疑者弁護、行政訴訟の改革、労働訴訟の改革などメガトン級の改革が今年中にすべて仕上げられるからです。
ほとんどは今年の通常国会で決まる
前述した改革課題の骨格はどれも未だ固まっておりません。諸勢力が激しくしのぎを削っている状態だと言って良いと思います。正月明けからまた動きが活発化し、おそらく2月~3月頃に法案の骨格が明らかにされ、3月に閣議決定、国会上程という段取りになると予想されています。日本の司法を大きく変える改革のほとんどすべてが今年の通常国会で決まってしまうということになります。
とりわけ重要な裁判員制度
改革課題はいずれも重要ですが、とりわけ戦後初めて市民が裁判員として裁判官とともに重大な刑事裁判を審理する裁判員制度をどうつくるかは、今次の司法改革の要をなすもので、きわめて重要です。その中心課題は裁判官と裁判員の数をどうするかです。裁判官3名に裁判員3~4名という程度では、裁判員が法律専門家たる裁判官の前で萎縮してしまい、対等な議論が出来ないおそれがあり、市民参加の妙味を発揮できなくなります。日弁連は、裁判員をお飾りにしないためには、裁判官は1~2名でいい、それに対し裁判員は9~11名必要だと主張しています。これに対し最高裁や法務省は、先に述べた裁判官3名に裁判員3~4名という構想に固執し、司法制度改革推進本部や国会議員に対し根回し工作をしています。本当に「市民の司法」をつくることができるかどうかはいままさに正念場です。
労働審判制ができる
個別の労働紛争を簡易・迅速に解決するために、「労働審判制」が導入されることがほぼ決まりました。従前は、解雇や雇い止め、あるいは配転などの労働事件が発生したとき、これを法的に解決する方法が裁判(仮処分、本裁判)しかなかったために、費用も期間もかかる、また裁判官が労働現場をあまり良く知らないといったことで、労働者が気安く利用することがなかなか困難でした。
それで、司法制度改革推進本部では、どちらか一方が労働審判を申し立てれば、裁判官に労働者代表委員、使用者代表委員が加わった合議体で、3カ月以内に 3、4回の期日で解決案(審判)を出す制度を導入することにしました。その解決案は、どちらか一方が3週間以内に異議申立をすれば、効力は失われて、裁判が始まることになりますが、確定すれば判決と同じ効力を持ちます。
労働審判制はこのように制約はあるものの、労働事件の司法的解決に裁判官ばかりでなく、雇用と労使双方の事情に詳しい人を加えて解決をはかろうとする点、使用者側の引き延ばしを許さないで簡易迅速な解決を目指す点において、大きな意義があり、労働者の闘いの武器になりうると思います。