事件報告
三精輸送機不当解雇事件勝利
(1)裁判の争点―労働者か、請負業者か
ある日、筒井さん、山本さんは、突然会社から「あなた方は請負業者です」と宣言されました。そんなバカなと2人は、1999年6月提訴し、本年5月14 日、京都地方裁判所福知山支部において、「原告らがそれぞれ労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する」との勝利判決を得たのです。会社の主張は、退けられたのです。
(2)工場の風景
大阪に本社のある三精輸送機株式会社は資本金32億円、輸送機(エスカレーター)や昇降機(エレベーター)を製作・販売する会社です。福知山市に唯一の工場を有し、毎朝8時頃から140名を超える労働者が工場の中へと吸い込まれていきます。
工場の門の中に消えていく人達全てが従業員かというとそうではありません。会社で働いているのは正社員約60名、派遣社員やら下請会社から約70名、そして今回の主人公、筒井速夫さん、山本周一さん等「常用」と呼ばれる約10名の人達でした。
同じように働いていて従業員と請負業者とでは大きな違いがあります。労働者ということになると、労働基準法、労働組合法、労災保険法等によって保護されるが、請負業者にはそれがありません。請負業者は、請け負った仕事を完成させてナンボであり、仕事を完成させなければ報酬を得ることはできないのです。一定時間働いて賃金をもらう労働者との違いは余りにも大きすぎます。
(3)大企業の21世紀戦略
「工場の風景」を多種多様の勤労者で描こうとしているのは三精輸送機株式会社にとどまりません。日経連は、1995年、終身雇用は幹部候補だけとし、他は契約社員や派遣・パートなど不安定雇用労働者などを中心にする21世紀戦略というべき提言をしました。
三精輸送機事件勝利判決は財界の21世紀の戦略に対する反撃です。
寺西労災損害賠償提訴
故寺西彰さんは、(株)エージーフーズが経営するそば処「鷹匠」三条店(三条大橋東入-以前ベラミがあったところ)で店長として勤務していましたが、平成 8年2月投身自殺を図りました(当時49歳)。寺西さんは、店長となった平成4年頃より、不況の影響を受けて年々下がる売上げの責任を連日のように社長から追及されました。売上げを伸ばすための様々な努力を求められ、年間ほとんど休日も取れず、1日10~13時間の長時間過密労働を強いられ、心身ともに疲労困憊していました。さらに、平成7年12月会社の屋台骨である三条店から他店に異動という左遷人事の予告を受けるなどストレスを加重させました。こうして寺西さんは反応性うつ病を発症し、正常な認識、行為選択能力が著しく阻害された状態で自殺するに至りました。
寺西さんの遺族は、「自殺過労死」として労災申請を行い、今年3月京都下労働基準監督署は労災認定を行いました。労基署の段階で「自殺過労死」につき労災が認められたのは、京都では初めてのケースです。そこで、会社には社員の生命と健康を守る義務があるとして、過重な売上げのみを追及して、社員の生命・健康に対する安全配慮を怠った会社の責任を追及すべく、今回の損害賠償請求の訴訟を起こすことになりました。寺西さんの遺族(奥さんと長男・次男)は、「悔しさと怒りをぶつけて、どうして夫(父)が自ら命を絶たなければならなかったのか、会社の責任を明らかにしたい」という決意です。どうか、皆さんのご理解と力強いご支援をお願い致します。
半鐘山事件 東山三十六峰にまた開発計画
「半鐘山」は、東山36峰の一つ、北白川山の通称です。銀閣寺道から少し入った、1,000坪ほどの小さな里山ですが、北、西側は白川に、南、東側は閑静な住宅地に囲まれています。一帯は風致地区第二種地域で、第一種低層住居専用地域ですが、白川に橋を架けて、山を消滅させてしまう開発計画など、住民にとっては、「寝耳に水」でした。
しかも、業者(幸田工務店)の開発計画では、北、西側の住宅地には、延べ4,000台もの4トントラックが土砂の搬出のため狭い生活道路を通行し、南、東側の住宅地は、8メートルを超えるがけ下になったり、がけ上になったりするという、多大な被害を受けるものです。
地域住民は一致団結して、半鐘山の保全を求め、市議会では請願は全党派一致で採択されました。にもかかわらず、本年3月末京都市長は業者の全面開発許可を認め、4月には京都府知事も白川への架橋を認めてしまったのです。
これに対し、地域住民の圧倒的多数にあたる、2,200名の住民が5月、開発許可の取消を求めた審査請求を提起し(京都市開発審査会)、あわせて国土交通大臣に河川占用等許可の取消を求めた審査請求を提起しました。たたかいはこれからです。
無年金問題 障害基礎年金の支給を求めて
「学生無年金障害者」をご存知でしょうか。20歳を過ぎた大学や専門学校生の期間中に、スポーツや交通事故、あるいは精神病その他の病気で重度の障害を負いながら、国民年金法の定める障害基礎年金が受けられず、年金制度の谷間に放置されている人々のことです。
今、20歳過ぎの大学生のいる世帯には毎年、区役所社会保健事務所から国民年金保険料納付の免除申請に関する書類が送られて来ています。これによって家族も学生本人も国民年金の被保険者となったこと(国民年金に入ったこと)を意識でき、学生自身に収入がなければ保険料の支払いは免除されています。しかし被保険者となっていることは間違いありませんから、事故などで障害を負っても、障害基礎年金が受けられ、生活の下支えがあります。
このように20歳過ぎの学生等が自動的(強制的)に国民年金の被保険者となることとされるようになったのは平成3年4月以降のことです。それ以前は、国民年金に入るか、入らないかは個々人の自由とされていました。国や自治体は学生等に対し、任意で入ることができるとの情報も周知して来ませんでした。また入る事が出来ると知っても、どうせ卒業して就職すれば厚生年金に入ることとなるとか、学生自身に保険料を払う収入はないなどの事情から、当時の学生等の 99%ほどは入っていませんでした。他方同じ学生等でも、20未満の時期に事故等に遭った場合は障害基礎年金は保障されています。このように平成3年以前に、20歳過ぎた学生の時期に障害をこうむった「学生無年金障害者」のみが国民皆年金制度のいわば谷間に放置され、困難な状況の中で歯を食いしばって生きて来ているのです。
この者達を放置することは、憲法の定める個人の尊厳(13条)及び生存権の保障(25条)、法制度のもとの平等(14条)からいって許されないことです。この度京都でも学生無年金者2名が国と社会保険庁を相手の訴訟を提起したのは、この憲法の実現を求めてのものです。皆さんのご支援をお願いします。
レンタルハウスサービス倒産事件 どうなる? 敷金・礼金の行方
本年3月19日、株式会社レンタルハウスサービス(以下、「レンタルハウス」と略称)が入居(予定)者から受取っていた多額の敷金、礼金等を家主に引き渡さず、預かったままで計画倒産しました。このため、既に敷金、礼金等を払い込んでいた京都大学、立命館大学等の新入生をはじめ、多数の学生、社会人が入居するために敷金等の二重払いを余儀なくされるという被害が発生しました。被害者数は、250名以上、被害額は総額では1億円以上に達します。
事務所からは、被害対策弁護団(17名)の団長を村山が、幹事を飯田が担当して、刑事告訴や損害賠償請求など、被害救済活動を支援しています。