京都第一

司法改革へ向け一歩前進

事件報告

司法改革へ向け一歩前進
これからが正念場
司法制度改革審議会の中間報告出される。

司法制度改革審議会は、11月20日、中間報告を発表し、広く国民の声を聞くとしています。

  • A 陪審などの国民の司法参加に積極的な方向を示す。
  • B 法曹の大幅な増員(5~6万人を目標にする)。
  • C 法曹養成のために法科大学院を提言。
  • D 裁判官の給源、任用、人事についてメスを入れ、公平性、透明性などを要求する。

などの点では積極的に評価できる内容を含んでいます。

しかし、全体的には、まだまだ抽象的な提言にとどまっていたり、あるいは不十分な面もたくさん残しており、これをどう前進させ、具体化するかはすべて今後の国民の運動にかかって来ています。

審議会がそれなりに評価できる中間報告を発表するに至ったのは、たとえば、先般、皆さまにもご協力をお願いした「司法改革100万人署名運動」が大幅に目標を達成し、256万人にのぼったなどの世論の盛り上がりが背景にあると思います。

いまは中間報告に対する批判や意見を集中することがたいへん重要になってきています。是非皆さまの声を審議会に送って下さい。中間報告は、インターネットで手に入ります。(http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/index.html

最終報告は来年6月に予定されています。この半年間が正念場です。ご理解とご支持を宜しくお願いします。

事件報告
下中労災事件
日立造船「過労自殺」の責任認める

「過労自殺」―今では定着した感のある言葉ですが、しばらく前まで、展望を切り開くのが大変でした。

京都の舞鶴でも、労災の適用と、日立造船の責任を追及し闘いに立ち上がった下中さん一家がいました。当初、監督署も審査官も、自殺を家庭問題と決め付けて、業務外の冷たい判断を下したのです。

闘いは、労働保険審査会と裁判所で続けられました。故下中さんの「まじめ」ぶりは会社内でも定評でした。そのまじめさが、一方で、自殺に追い込むほど過酷な労働を強いました。しかし他方で、まじめ故に、多くの資料を残しており、それが裁判で役立ちました。いかに過酷な仕事に従事していたか・会社内の良心的な人たちの証言もあり、次第に浮き彫りになっていきました。そして、もう一方で、大変狭かった「過労自殺」の労災認定の入り口が、多くの人たちの力で、次第に大きくなっていったのです。

労働保険審査会が逆転の結論を下すことは、殆どありません。しかし、下中さんの自殺は「過労」によることを認め、大逆転をさせたのです。闘いは、そのまま裁判所に流れ込み、遂に和解解決をさせたのです。

会社は、「十分な償い」と呼びうる金銭補償を行い、「今後二度とこのような事件を起こさない」ことを誓いました。

あきらめずに闘うことの必要性を改めて教えてくれた事件でした。

京都原爆訴訟
ついに原告勝訴で確定しました!

京都原爆訴訟の控訴審判決が11月7日に大阪高裁で言い渡されました。高裁は、京都地裁に続き、再び被爆者の高安九郎さん(ペンネーム・74歳)の原爆症認定申請を却下した厚生大臣の決定を取り消すことを認めました。そして、この判決に対し、厚生大臣は上告することができず、確定しました。

被爆から55年もの長期間にわたって白血球減少症や肝機能障害に苦しみ、原爆症の認定申請を行ってからも15年もの歳月がかかりました。判決は、厚生大臣が原爆症認定の拠り所としていた「DS86」という被曝線量推定の方式に対し強い疑問を投げかけ、単に爆心地からの距離だけで認定の可否を決めていた原爆症認定のあり方について厳しく批判しています。

長崎松谷訴訟の最高裁判決に引き続くもので、現在の原爆症の認定行政を被爆者の立場で根本的に転換することを求める内容になっています。被爆者の実態を正しく認識し、被爆者に対する十分な国家補償の実現がなされなければ「ノーモア・ヒバクシャ」の声は止まず、「戦後」はまだまだ終わっていません。

高安九郎

私は原爆症の認定申請をすれば直ぐにでも認定されると思っていました。しかし、国の認定行政の厚い壁に何度も跳ね返されました。蟷螂の斧の闘いも強力な弁護団や支援の方々のおかげでやっと報われました。国には被爆者救済のための原爆症認定行政のあり方を根本的に改めてほしいと思います。京都第一では浅野先生にお世話になり、ありがとうございました。

原爆症認定の新聞記事

社会保険京都病院 森川事件
パートの雇い止めは許さず

雇い止めされたパート看護婦が地位保全を申し立てた事件で、京都地裁はこれを認め、賃金の仮払いを命じる決定を下しました。この看護婦は、平成10年4月に社会保険京都病院にパートとして採用され、その後、翌年4月と9月に各更新された後、この期間満了を理由に雇い止めをされたのでした。

病院は従来看護婦をパートとして採用しても、相当長期間継続雇用して来ました。最近に至り病院はパート労働の流動化をはかり、期間の更新を認めないとの方針に変えたものです。病院は、更新回数も少なく、更新時にも期間満了で終わりと約束してきたなどと主張しました。

これに対し裁判所は、「パートの場合でも、雇用継続を期待することに合理性がある場合には、その雇い止めは使用者の自由ではなく、合理的な理由を必要とする」と判示し、本件ではそのような合理性は認められないと結論づけたのでした。

政府と財界は近年雇用の流動化を進めています。この決定はこのような流れに厳しい審判を下したものです。この事件は病院がなおも争う姿勢を示したため本裁判となりました。皆さんのご支援をお願いします。

森川純子

昨年はおかげさまで仮処分に勝利し、組合の仲間、家族ともども本当に喜んでいます。病院側がなお争っているため、今年は本裁判が続きます。まだ長くなりそうですが、一日も早く職場に戻れるよう頑張ります。

迎賓館

都市計画公園であり、国民公園でもある京都御苑に迎賓館を建設する計画は、無駄と環境破壊の公共事業の最たるものの一つです。

御苑内には大宮御所という歴史的遺産であるVIPの宿泊施設があり、数百億円の税金を投入して、鉄筋コンクリート造りの「和風」宿泊施設を新たに建設する必要性は全くありません。

しかも、計画は A特定の建物のために用途地区を変更して緩和し、B福祉、教育施設でもないのに「都市施設」に指定し、C廃止できる要件もないのに公園を廃止するなど、おおよそ都市計画の常識を逸脱した違法性の強いものです。

ムダと環境破壊の迎賓館いりません市民集会

ムダと環境破壊の迎賓館いりません市民集会

迎賓館計画については京都弁護士会も中止を求める意見書を3度にわたって出していますが、当事務所も住民運動に積極的に参加しています。

特定調停法

昨年2月から施行されている特定調停法が活用されています。特定調停は、債務の支払いが困難となってきた債務者であれば誰でも申し立てることができ、簡易裁判所の窓口には申し立ての際の書式が用意されています。

申し立ての際、準備することは、何よりも生活と経営の見直しです。家計簿を見て、無駄を省いて月々一体総額いくらを返済できるのか、債権者からの借入総額はいくらなのか検討することから始まります。

京都簡易裁判所における特定調停では、負債は利息制限法に基づき計算され、負債総額を月々の返済総額で割った回数の均等分割となります。例えば負債総額300万円で月々の返済総額が65円であれば50回の均等払となるのです。50回支払う間金利はつけない取り扱いとなっています。

「京都第一」2001年新春号