組合差別を許さない~京都府医師会不当労働行為事件
組合差別を許さない~京都府医師会不当労働行為事件~
1.労働者の地位向上に向けた京都府医師会労働組合の活動
京都府医師会館は、以前は中京区の壬生にありましたが、老朽化によって移転することになり、現在はJR二条駅前にあります。そんな京都府医師会の職員で昭和29年に結成された京都府医師会労働組合は、結成以降、組合員だけでなく職員全体の権利向上のための行動を続けています。旧医師会館時代は、京都府医師会と協定を結んで組合活動のために必要不可欠な組合事務所や組合掲示板の貸与を受け、労働者の地位の向上を目指して積極的な活動を行ってきました。
2.組合への貸与は「目的外使用」!?
~新医師会館への移転に伴う組合事務所等の貸与拒否~
平成22年に医師会館が新会館に移転するという情報を入手した組合は、平成18年からの春闘要求などの中で、新医師会館に移転しても従来通り組合事務所及び組合掲示板を貸与するよう要求し続けました。
しかし医師会は突如、「新医師会館においてスペースに余裕がない」という理由で、新医師会館では組合事務所を貸与しないと通告してきました。春闘などで従前から組合がスペースを確保するよう要請し、医師会側が「検討する」という回答を繰り返していたにもかかわらずこれを一方的に翻した合理的理由は、なんら示されていません。組合は、組合事務所等のスペースを確保するよう設計段階から要請し続けてきたのですから、医師会が組合に対して誠実に対応する意思があればスペースを確保することは十分に可能だったはずです。スペースを確保することが困難であるという医師会の主張は、拒否の理由とは到底なり得ません。
しかも医師会の担当者は、組合への貸与は目的外使用にあたるとの認識を示し、しかも「組合との関係が良好でなくなったから」「会員の了解を得られない」「貸さないことに理由は要らない」などと不合理な主張を続け、明らかに組合を蔑視する態度を示したのです。
こうして組合事務所の貸与を受けられない結果、組合の運営には大きな支障が生じています。ロッカーや書棚を設置することすらできず、組合関係書類等を収納するスペースもありません。また、事務用品、パソコン、プリンター等もないため事務作業が停滞しており、不自由を極めています。当初は会議室の利用すら拒否されていたため、会議すらままならない状況でした。掲示板も暗く人通りの少ないスペースを与えられただけで、到底掲示板としての役割を果たすことはできません。
3.京都府労働委員会へ申立
そこで組合は、医師会による組合事務所等の貸与拒否は不当労働行為に該当するとして、組合事務所の貸与と職員の目にとまりやすい場所への掲示板の設置を求め、京都府労働委員会に申立を行いました。
医師会の担当者の言動からすれば、医師会が組合を蔑視し、その弱体化を狙っていることは明らかです。これまで貸与してきた組合事務所等を、会館の移転に伴って合理的な理由もなく貸与しないとすることは許されません。労働者の権利の実現のためには、労働者が労働組合に加入し、一致団結して使用者と交渉を行っていくことが必要不可欠です。
労働者の地位の向上のためにも、当事務所は組合差別に対して一丸となって闘っていく所存です。みなさまのご支援を是非ともお願い致します。
弁護士 谷 文彰