違法な懲戒処分を受けた元社会保険庁職員が処分取消を求めて提訴
違法な懲戒処分を受けた元社会保険庁職員が処分取消を求めて提訴
不当な国の処分
2011年12月15日、旧社会保険庁の職員が自らに対してなされた懲戒処分(2割減給2ヶ月)の取消を求めて、大阪地方裁判所に提訴しました。原告は厚生労働省関連の労働者で組織する全厚生職員労働組合京都支部に所属しています。
京都で働き京都で生活しているにもかかわらず大阪で訴訟をしなければならなかったのは、処分を行った社会保険庁が、年金記録問題を機に解体され、行政訴訟法上の問題によって京都で裁判を行うことができなくなってしまったからです。国が自ら社会保険庁を解体しておきながら訴訟を大阪で強いることは、不当と言うほかありません。同様の問題は、年金に関する社会保険庁の処分についても生ずる可能性があり、問題は今回の事件にとどまりません。ここに、本事件の根本的な問題があります。
年金記録問題の職員への押しつけは許さない
この懲戒処分は、原告が組合の役員として勤務時間中に上司の許可を得ないで労働組合活動に専務するいわゆる「無許可専従」を行ったことを理由にしています。しかし、原告はたしかに組合の役員を務めていましたが、勤務時間中、通常の業務を行っていたことはもちろん、それに加えて、上司の指示を受けて、上司と話し合いをしながら業務改革に関する素案の検討等をしており、これらの行為は業務そのものでした。実際、このような折衝を経て京都の年金業務の改革が進められ、より国民の立場に立った窓口業務を行うよう、改革が進められてきたのです。原告が「無許可専従」として処分されるいわれはありません。
社会保険庁の解体を機に多くの職員が分限免職となり、京都では15名が既に分限免職処分の取消しを求めて訴訟を提起しています(詳しくは、公務員の大量首切りを許すな!京都の元社会保険庁職員が一斉提訴をご覧下さい)。懲戒処分を受けた人もいますが、受けていない人も多数おり、中には懲戒処分を受けていないのに夫婦揃って分限免職処分となった人もいます。いずれの訴訟も、年金記録問題の原因を職員に押しつけようとする政府の思惑によって発生したものであり、問題の本質は同じです。
京都で提起されていた別の懲戒処分取消訴訟の判決では、「原告を日本年金機構に採用せず分限免職としたことについては疑問の余地がある」と明言されました。弁護団は、今回の一連の訴訟を通じて、このような違法な処分が取り消され、社会保険庁問題に関する政府の対応の違法性が断罪されることを確信するものです。
弁護士 荒川 英幸
弁護士 渡辺 輝人
弁護士 藤井 豊
弁護士 谷 文彰