特定商取引法・割賦販売法改正 ~消費者の保護が強化
特定商取引法・割賦販売法改正 ~消費者の保護が強化されました~
近年、一人暮らしの高齢者等を狙って、クレジットを利用して大量の商品購入契約を締結させる悪質な訪問販売などの被害が深刻化したことを受け、特定商取引法・割賦販売法が2008年6月に改正され、2009年12月1日より施行されています(一部は、2010年12月までに施行)
特定商取引法の改正
1 特定商取引法とは
特定商取引法とは、訪問販売、電話勧誘販売、通信販売、特定継続的役務提供取引(エステ、語学・パソコン学校、塾など)、連鎖販売取引(いわりゆるマルチ商法)、業務提供誘引販売取引(いわゆる内職・モニター商法)といった消費者被害が生じやすい取引を対象として、事業者による不公正な勧誘行為等の取り締まりやクーリングオフ(一定期間内の無条件解除)制度などによってトラブルを防止する法律です。
2 改正点その1
規制の抜け穴を解消するため、これまであった指定商品・指定役務制を廃止しました。
原則、全ての商品・役務(サービス)が対象になります(権利については指定制)。
適用が除外されるもの
- 他の法律によって消費者保護の措置ができるもの
- クーリングオフの規定が除外されるもの・・・消耗品、自動車、電気・ガス・葬儀に関する役務等
3 改正点その2
~被害が発生しやすい訪問販売について規制を強化しました。
- 契約を拒否した者に対する再度の勧誘を禁止しました。
- 次々販売や悪質リフォームのように、日常必要とする分量を著しく超える商品・役務についての契約(過量販売)を、契約後1年内に解除することができ、販売業者は違約金等を請求することができません。
4 改正点その3
- クーリングオフが認められない通信販売についても、返品の可否・条件を広告公告に表示していない場合は、原則として、8日間、送料消費者負担で返品(契約解除)できます。
- 事前の承諾・請求がない限り、電子メール広告の送信は禁止です。
割賦販売法の改正
1 割賦販売の定義改正
割賦販売の定義を一部改正し、改正前の2ヶ月以上、かつ3回以上の分割払いのクレジット契約に加えて、2ヶ月を超える1回払い、2回払いも対象としました。
2 改正点その1
クレジット(信用購入あっせん)においては、指定商品・役務制を廃止しました。
3 改正点その2
これまで、悪質商法の被害は、個別式クレジットによるものに集中していたため、個別式クレジットの規制が強化されました。
個別式クレジット(いわゆる契約書型クレジット)とは、クレジット会社が販売店に商品等の代金を立替払いし、購入者がクレジット会社に立替払金を支払ういわゆるクレジット契約のうち、クレジットカードなどを交付し、予め限度額を設定して立替払いを行うのではなく(包括式クレジット)、契約毎にクレジット契約を結ぶ契約をいいます。
1.クーリングオフ
訪問販売等(通信販売除く)において、個別式クレジット契約を利用したときは、クレジット契約にもクーリングオフを適用し、既払い金の返金を請求することが可能となりました。
2.与信契約取消権
訪問販売等(通信販売除く)において、販売契約またはクレジット契約に関して、虚偽説明など不適正な勧誘があった場合には、販売契約とともに個別式クレジット契約を取り消すことができ、既払い金の返金を請求することが可能となりました。追認をすることができるときから6ヶ月以内または販売契約から5年以内であることが必要です。
3.過量販売の解除
訪問販売において、個別式クレジットを利用した場合に、過量販売契約の解除ができるときは、クレジット契約も解除することができ、既払い金の返金を請求することができます。
4.書面交付義務
通信販売を除く訪問販売等の契約においては、これまでは、販売業者が交付していた書面について、個別式クレジット業者が、クレジット契約書面の交付義務を負います。そこには、「販売業者の勧誘等についいて調査内容と結果」を記載することが必要です
5.販売方法調査義務・業務適正化義務
クレジット業者に適正な与信義務を課すことによって、加盟店の悪質な販売行為を防止します。
今回の改正は、特定商品・役務制の廃止や日常生活に必要な量を超える商品の購入などについて過量販売の解除権を認め、消費者の保護を強化しました。また、悪質商法にクレジット契約が組み合わせることによって、多額の債務を負うことになる消費者の被害を防止するため、(個別式)クレジット業者の責任が強化されました。
しかしながら、いわゆる翌月一括払いのクレジットは対象外とされており、クレジットカードを利用する包括式クレジットに対する規制は不十分です。今後は、規制がより緩やか包括式クレジットや翌月一括払いを利用した悪質商法による被害を発生させないよう注意が必要です。また、現状では、まだまだクレジット会社の利益や都合が優先されがちなクレジット取引については、抜本的な被害救済のための法改正が求められます。