弁護士コラム

改憲勢力が衆参3分の2の議席!憲法を守る運動の正念場が続く!

改憲勢力が衆参3分の2の議席!憲法を守る運動の正念場が続く!

1.7月10日参議院選挙の結果と新たな改憲への動き

参議院選挙の結果、自民党は56議席、公明党は14議席を獲得し、おおさか維新の会などを加えた改憲勢力は、参院の3分の2(162議席)を超えてしまいました。

安倍首相は、選挙期間中、街頭演説で一度も憲法問題に触れなかったにも関わらず、投票日の7月10日夜、テレビ番組の中で「(憲法改定へ)橋がかかったと思う」「これからは憲法審査会においていかに与野党合意をつくっていくかだ」等と述べ、改憲への意欲を露わにしました。選挙運動期間中はひた隠しにしてきた改憲問題を、選挙が終わった直後に持ち出すというこの姿勢に、安倍首相や自民党が企む改憲が、いかに反国民的な内容であるかが表れています。

2.国民世論の状況

毎日新聞7月18日世論調査によると、改憲議論賛成52%・反対32%という結果が現れており、国民の中にも憲法を議論する意識の高まりが見られる状況といえます。ただ、同世論調査によれば、憲法9条の改正については反対が39%で、改正賛成は38%となっています。また「自衛隊を他国の軍隊と同様、海外で戦争のできる国防軍にする」という自民党改憲草案の内容での改正賛成は8%に止まっています。これらの数字から見ると、安倍首相や自民党の狙いと国民の意識との間には大きな乖離があることがわかります。

3.今後の政局の流れ

しかし油断はできません。国会の憲法審査会が改憲に向けて動き始めるということ、PKO活動としてアフリカ南スーダンに派遣されている自衛隊の「駆けつけ警護」がいよいよ行われる可能姓が高くなってきていることを考えると、改憲論議が先行していく危険性があります。

例えば、南スーダンでの駆けつけ警護活動の中で自衛隊員に死者が出て、その棺が日本に帰ってくるという事態が現実化した場合、敵がい心が煽られて、「軍事によらない平和の実現」や「専守防衛」の声はかき消される恐れがあります。

その状況に乗じた政権党が、「自衛隊に死者が生まれたのは武力攻撃にブレーキをかける憲法9条が原因だ」等のスローガンを掲げ、一気に憲法9条改定案を国会に上程し、国民投票へ持ち込んでくる危険があります。国民投票の行方はイギリスのEU離脱国民投票のようにわからないものです。

4.「軍事によらない平和」こそ大義

過去、日本は憲法9条をもつ国として、海外の紛争地への支援は非軍事の面でかかわってきました。

2006年、フィリピン政府とフィリピンからの独立をめざす武装勢力との武力衝突問題に日本が関わることとなった際、日本は、紛争地に自衛隊を派遣することはできないため、国連職員とジャイカ(国際協力機構)職員を派遣しました。ジャングルに潜む武装勢力のもとへ丸腰の職員が入っていき、話し合うことから始まりました。武装勢力の人々もやはり子を持つ親であり、戦火で潰れた学校の再建を強く希望していました。そこで職員は日本のNPOに働きかけて学校建設募金に取り組みました。現地では、武装勢力の人々の話し合いが始まり、ついに学校再建が実現しました。また、日本の農業技術も導入し、ミミズを活用することで土を豊かにし、2年間で生産量が2倍になりました。こうして、武装勢力の人々の日常活動の中心が農作業へと移り変わっていきました。子どもたちは本を読む中で心も知識も豊かになっていき、大人たちは、そんな子どもたちの姿を通して未来に明るい夢をもつようになりました。こうした取り組みが積み重なる中で、内戦が終結し、平和が実現したのです。

また、アフガニスタンでの武装解除、兵力引き離し活動では日本がホスト国になり武力によらずに平和を実現しました。

5.知憲-現行憲法を学ぶ活動をお手伝いします!

第二次世界大戦では310万人の日本人の命、2000万人ものアジアの人々が犠牲になりました。その反省のもとに生まれた日本国憲法9条の「軍事によらない平和を志向する」という宣言は、私たち国民が「普通に働き、普通に暮らす」上でも大義をもっていることは明らかです。9条以外にも、日本国憲法には、国家や大企業ではなく、一人一人の個人を尊重することから出発した様々な人権規定や、それを保護するための統治機構規定が備わっています。今こそ日本国憲法の先進性・優位性を学んだ上で、政権党が持ち出してくるであろう改憲案の本質を打ちやぶっていくことが重要だと思います。当事務所では、皆さんの「日本国憲法を学んで見たい」「改憲問題について考えたい」という声に応えて、憲法学習会講師活動を行っています。小規模の学習会でも結構ですので、是非当事務所までご要請下さい!