過労死防止法案の制定及びその運動に関わらせて頂いて
過労死防止法案の制定及びその運動に関わらせて頂いて
1 過労死防止法案が可決
超党派の議員連盟が議員立法で提出した「過労死等防止対策推進法案」が衆院厚労委で全会一致により可決され、その後、6月20日の参議院でも可決されて今国会にて成立した。
法案は、過労死や過労自殺についての定義を示すと共に「社会の損失」であると位置づけ、防止策の実施を「国の責務」とした。また、過労死の実態を幅広く調査研究した結果を踏まえ、必要なら法改正をすることをも盛り込んだ。
この法案の制定を契機に、長時間労働を当然のように押し付ける日本の悪しき慣行が改善されることを期待している。
2 過労死防止基本法の制定運動に関わらせて頂いて
私自身は弁護士4年目となった。1年目からがむしゃらに仕事に取り組み続け成果も出てきたが、時々、弁護士の存在意義とは何だろうと疑問に思うようになった。裁判に勝っても、怪我や病気で苦しむ人を治癒してあげられるわけではなく、当然、亡くなられたご家族が戻ってくるわけではない。自分自身が、過労死・過労自殺事件やC型肝炎訴訟等の人の生死に深く関わる裁判に取り組み続け、ご遺族や患者の苦しみに接するたびにその思いが強くなった。
そのような折、過労死防止基本法制定運動の末席に加えて頂いた。まず、ご遺族や各団体の方々のみならず、若い大学生の人達が多数この運動に関わっておられることに驚き、また、大きな刺激を受けた。毎月、署名を集めるために街宣活動を行っていたが、その際、亡くなられた家族への思いをご遺族が街頭で熱く訴えられているのを聞き、胸が締めつけられる思いでいっぱいになった。
さらに、ご遺族の方と共に、宇治市議会や福知山市議会の会派をまわって、意見書を採択してもらえるよう働きかけるという活動にも取り組ませて頂いた。その際、ご遺族の方や議員の方から、「弁護士さんが裁判に熱心に取り組んでくれて本当によかった」と言う声を聞いた。また、「裁判で戦うことが真相究明につながる」「勝訴によって、命に対する(会社の)責任を追及でき、(亡くなった家族の)生きた証を残すことも出来た」との話を聞くことも出来た。
疑問に感じていた弁護士の存在意義は、この運動を通じて様々な人々と接することで痛感することが出来た。多くの人たちの思いがつまった法案が、このたび制定に向かうことになり嬉しい気持ちでいっぱいである。この運動に加えて頂き、一緒に運動させて頂いた実行委員会の皆様に深く感謝したい。
この法案の制定を契機に改めてご遺族の声に寄り添い、弁護士としてより良い仕事が出来るよう全力で頑張り続けたい。
以上