仰木の里・幸福の科学学園進出問題 ~建築確認の取消を求めて審査請求
仰木の里・幸福の科学学園進出問題 ~建築確認の取消を求めて審査請求~
1.全国的にも最大規模の住民が審査請求に立ち上がる
2011年12月12日、仰木の里及び近辺の地域住民8331名が、幸福の科学学園に対して民間確認機関がした建築確認の取消しを求めて、大津市建築審査会に審査請求書を提出しました。「建築審査請求」が8000人を超える規模で行われるのは、全国的にも例がありません。本件は、仰木の里弁護団(19名)を結成して支援しています。
2.地域の状況
「仰木の里」はUR(旧住宅都市整備公団)が開発した滋賀県最大規模の閑静な住宅地です(施工面積188.8ha、計画人口1万6000人)。その北側部分の公園に隣接する「谷埋め盛土」の一帯(学園建設予定地)は、地盤が軟弱であるため、住宅開発には不適当であり、未利用地として売れ残ってきました。
3.「幸福の科学学園」進出計画
ところがURは、7万9000m2、5区画の学園建設予定地を大川隆法氏が率いる「幸福の科学グループ」の「幸福の科学学園」に売却し、同学園は、全国から信者の子弟を集めた大規模(学生510名、教職員100名)な全寮制(一部は通学)の中高一貫の「エリート校」を建設しようと計画しています。
4.開発許可の脱法と問題点
学園建設予定地は、校舎用地、寄宿舎用地、グラウンド、クラブハウス、駐車場等により構成されます。しかし、幸福の科学学園は、都市計画法上必要な「開発許可」を免れるため、グラウンドについては時期をずらしたうえで、校舎と寄宿舎について別々に建築確認を申請し、しかも、これに伴う土地の改変行為は「開発行為」(区画形質の変更)にあたらないとして、大津市長から「開発行為非該当証明」を受けて、民間建築確認機関より建築基準法に基づく「建築確認」を取得しました(2011年10月14日、17日)。
「開発許可」を受けるためには、道路、公園、給排水施設の確保、地盤沈下、崖崩れ、出水その他による災害の防止、樹木の保存、事業者の資力・信用の確保など、「建築確認」との比較において、はるかに詳細なチェックがなされ、開発地や周辺地域に上記の不備による被害が起こることのないようにチェックされますが、これらのチェックを全て「脱法」して、建築確認だけで建設しようとしているのです。
しかも、これらの過程においては、地盤の危険性や教育基本法・学校教育法上の学園の問題点(1.教育施設の敷地の安全性確保の要請、2.政党=幸福実現党や教団の個人崇拝の宗教活動との一体性)並びにこれまでの批判者への高額損害賠償裁判攻撃などに強い懸念を示す地域住民に対し、住民が納得できる説明を全くせず、かえって「最大最強の敵」などと誹謗中傷するなど、「地域連携」が求められる学校設置計画とはおよそ相容れない異様な対応がなされてきました。
5.取消すべき最大の争点
建築確認がされた場合に、その取消を地域住民が求める手段としては、建築審査会に対し60日以内に審査請求を行うという方法があります。ここでの最大の争点は、明らかに「開発行為」=「区画形質の変更」に該当するにもかかわらず、開発許可を受けていないという違法行為があることです。すなわち、「土地の形状の変更」、「土地の性質の変更」及び「土地の区画の変更」のいずれにも該当するため、建築確認は取消を免れません。
具体的には、次の3点において、「形状の変更」に該当します。
第1に、本件開発においては、建築物の建築される部分以外の多くの箇所で(大津市の開発行為該当性の基準である)50cmを超える切土または盛土が行われることが明らかです。
第2に、場所によっては2mを超える切土、1mを超える盛土、2mを超える切盛土が行われることが明らかです。
第3に、建築行為に伴わない宅地の改変範囲の面積は、校舎用地において930m2以上、寄宿舎用地において612m2以上と、それぞれ500m2を超えており、この点からも、宅造規制区域における「土地の形状の変更」に該当し、かつ、双方の申請用地が1000m2を超えていることから開発行為要件を満たし、開発許可が必要です。
また、意図的に校舎用地と寄宿舎用地を分けて申請していますが、グラウンド用地やクラブハウス等も含めて複数の区画を統合して学校用地としての一体的利用を図ることから、「区画の統合」にもあたり、開発許可が必要です。
さらに、「谷埋め盛り土」で地盤が軟弱であるため、住宅開発には不適当として放置されてきた土地を、大規模建築物の敷地として利用するのですから、明らかに「性質の変更」にも該当します。
6.学校教育法による設置認可は許されない
なお、開発・建築の認許可の問題とは別に、今後、学校設置のためには、学校教育法による設置認可を滋賀県知事から受ける必要があります。しかしながら、学校用地の安全性、地域連携の欠如、政党や教団と教育の一体性など、これらの要件も満たしておらず、これについても今後の重要な争点となります。
飯田 昭、谷 文彰、寺本 憲治