非正規労働者の韓国調査に参加しました
非正規労働者の韓国調査に参加しました
韓国の非正規労働実態調査
2011年5月29日~6月1日、労働問題に関心を持つ自由法曹団京都支部・京都総評の有志、学者の総勢10名で、韓国の非正規労働の調査に行ってきました。当事務所からは、弁護士糸瀬美保及び大島麻子の2名が参加しました。
韓国非正規労働者の法制度
日本と同様、韓国でも非正規労働者が増加しており、2007年、「非正規労働者保護法」と呼ばれる一連の法律が施行されました。これら「非正規労働者保護法」により、有期契約労働者の雇用契約については2年の期間制限が設けられ、これを超えて雇用が継続されている場合は、無期契約とみなすとされました。
また、有期契約労働者と正規労働者との差別的処遇の禁止が明文化され、労働委員会での是正の手続きも規定されています。法施行から2年以上が経過した現在、非正規労働者をめぐる状況は改善したといえるのか、労働団体や弁護士団体などを訪問し、聞き取りや意見交流を行いました。
韓国非正規労働者の現状と取り組み
訪問したのは、非正規労働者の労働組合を支援する団体である非正規労働組合連帯会議及び非正規労働センター、韓国の二大ナショナルセンターの1つである民主労総、弁護士団体である民弁(民主社会のための弁護士集団)労働委員会の4団体でした。
これら団体の「非正規労働者保護法」に対する大方の評価は、非正規労働者の権利促進に役立っているとはいえないというものでした。具体的には、有期雇用契約と派遣契約との連携がなされておらず、経済団体が、派遣労働と有期契約を繰り返すという脱法的な行為を指導している実態があること、また、契約期間終了後も、労働条件は変わらず、正規雇用なのかも曖昧なまま雇用が継続されている「中間職」と呼ばれる労働者が相当割合生じてしまっていることなど、正規職への転換が進んでいない現実が指摘されていました。また、差別是正手続きについても、3か月以内に申し立てをしなければならない等の手続要件の困難さから、申し立て件数が伸びていないとのことでした。
他方、労働団体では、組織力を駆使して「企画訴訟」と呼ばれる積極的な裁判闘争を打って出て成果をあげていること、また、労働委員会が差別是正手続きを行うことが法定されたため、国家が予算措置を講じて各国の差別是正の手法について積極的な調査を行われるようになったことなど、積極的な取り組み等も紹介されました。
今後について
韓国と日本とでは共通する問題も多く、非常に有意義な意見交流ができました。訪問団では、現在報告書をまとめる作業を行っていますので、この成果を広くお知らせし、今後の取り組みに生かして生きたいと思います。